「混ぜるな危険」という注意書きを、見たことがある方は多いでしょう。
物質の中には単体では安定していても、特定の物質と混ぜ合わせると有毒ガスが発生したり爆発したりするものがあります。
そこで、今回は混合危険の組み合わせについてご説明しましょう。
混合危険は危険物取扱者の資格試験にもよく出てきます。
ですから、資格取得を目指している方は、正確に理解しておく必要があるでしょう。
また、危険物を取り扱っている場所に勤めている方も知っておいて損はありません。
ぜひこの記事を読んでみてくださいね。
目次
- 混合危険って何?
- 混合危険の種類とは?
- 混合危険による事故を防ぐためには?
- おわりに
1.混合危険って何?
混合危険とは、2種類以上の物質が混合したり接触したりすることにより、発火や爆発の危険が生じることを指します。
単体では安全な物質も、別の物質と混ぜ合わせることによって危険になるものも少なくありません。
また、私たちの周囲にたくさんある物質が混じると、危険になるものも多いのです。
一例をあげると空気と水。
禁水製の危険物は決して少なくありません。
また、空気は人が生活できる場所すべてに存在しているので、空気に触れると危険な物質というのは取り扱いに最も注意が必要です。
さらに、危険物取扱者の試験勉強をしていると「混触危険」という言葉を目にすることもあるでしょう。
混触危険と混合危険の違いは、反応が起きるまでの長さです。
混触危険の物質は物質同士が触れあえばすぐに反応が起こります。
塩素系の洗剤に酸素系の洗剤を混ぜ合わせると有毒ガスが発生するのは有名ですが、これは物質同士が接触してすぐに反応が起こるので「混触危険」なのです。
一方、混合危険は混ぜただけでは反応は起こりにくいでしょう。
物質同士が混ざりあったうえで発熱や摩擦(まさつ)、打撃などの刺激を与えると、一気に爆発したり発火したりします。
この混合危険の仕組みを利用して作られているのが、黒色火薬です。
黒色火薬は硝酸カリウムと木炭、硫黄(いおう)の混合物。
この3つの物質はどれも単体では何の危険もありません。
また、火薬自体もそのままでは黒い粉末にすぎないのです。
しかし、火を近づけたり打撃を与えたりすると発火したり爆発したりします。
このように、混合危険をあえて利用することによって生成される物質もあるのです。
2.混合危険の種類とは?
では、混合危険の種類にはどのようなものがあるでしょうか?
この項では、混合危険を起こす組み合わせと特徴をご説明していきます。
2-1.酸化物質と還元性物質
酸化物質とは、酸素を放出してほかの物質を参加させる性質があります。
危険物の第1類第6類が該当するのです。
また、還元物質とは酸素を受け取ってほかの物質を還元する性質を持った物質で、危険物の第2類と第4類が該当します。
ですから、この類の危険物を混ぜ合わせて火を近づけたりすると、発火したり爆発したりするのです。
2-2.酸化性塩類と強酸
危険物第1類に分類されている塩素酸塩類や過塩素酸塩類、過マンガン酸塩類と硫酸や濃硝酸などが混ぜ合わさると、不安定な遊離酸(ゆうりさん)が発生します。
この遊離酸(ゆうりさん)は可燃物を発火させる恐れがあるのです。
また、遊離酸(ゆうりさん)自身も分解して爆発することがあります。
2-3.爆発性物質の原料となるもの
アンモニアに塩素、塩素酸カリウム、ヨードチンキを混ぜ合わせると、「塩化窒素」「塩素酸アンモニウム」「よう化窒素」という爆発性物質ができます。
前述したように、爆発性物質は厳重に保管している限りは、問題ありません。
しかし、わずかな打撃や摩擦(まさつ)などで大爆発する恐れがあるのです。
2-4.水と金属粉、もしくは禁水性物質
危険物の第3類に該当する禁水性物質は、その名のとおり水と接触すると発火したり爆発したりします。
また、危険物の第2類に該当する金属粉も水と混合すると危険です。
水というと真水を想像しがちですが、人間の体液も水になります。
また、雨に混じっても大変危険です。
2015年8月に中国の天津で発生した大爆発事故では、最初の爆発の後で禁水性物質に水をかけて消火したので、第二の大爆発が起きたと憶測されていいます。
つまり、万が一禁水性物質や金属粉を保管してある場所が火事になった場合は、決して冷水消火を行わないようにしなくてはなりません。
3.混合危険による事故を防ぐためには?
ここまで記事を読んでいただければ、混合危険がある物質が意外と多いのにお気づきになられたと思います。
これらの物質を扱っていたり作っていたりする工場も少なくありません。
そこで、この項では混合危険による事故を防ぐための注意点をご紹介しましょう。
3-1.一緒に運搬しない
混合危険がある危険物の類同士は、混載して運搬することが禁止されています。
つまり、第1類と第2類などは、同じトラックに積めないのです。
これは、消防法の危険物運搬にかかわる項目に明記されています。
しかし、「同じ敷地内ならばよいだろう」と思う人がいるかもしれません。
万が一ふたつの物質が混じりあってしまえば、処理も大変です。
ですから、たとえ隣の建物に持っていくだけでも、混合危険が起こる物質は別々に持っていきましょう。
3-2.一緒に保管しない
禁水や火気厳禁など分かりやすいものは、注意もしやすいでしょう。
しかし、危険物の類同士の危険性は、分かりにくいこともあります。
ですから、混合危険がある危険物の類を扱っている場合は、従業員全員に危険度をしっかりと知らせましょう。
そのうえで、別々の場所での保管を徹底します。
別の容器に入れておけば、混合の危険はぐっと低下するのです。
しかし、すぐ近くに保管しておいた場合は地震や火災が起きたら、容器が破損して混ざってしまうかもしれません。
ですから、どんなときでも絶対に混ざらないように置き場所自体を分離しておきましょう。
3-3.火災が発生したら、消防に消火方法をすぐに教える
禁水性物質を取り扱っている場所やその付近が火事になれば、消火方法に注意が必要です。
危険物取扱者の資格保持者が通報し、禁水性物質があることと、具体的な物質名を教えましょう。
そうすれば、別の方法で消火してくれます。
また、別の場所で保管してあるとはいえ混合危険がある物質を両方取り扱っている施設、もしくはその付近で火災が発生した場合も消防に通報を忘れずに。
4.おわりに
いかがでしたか?
今回は混合危険の組み合わせについていろいろとご説明しました。
まとめると
- 混合危険とは、物質同士が混ぜあわさると爆発や発火の危険が生じること。
- 部室同士が触れあってすぐに発火や爆発などの危険がある場合は、混触危険という。
- 混合危険がある物質は別々に保管する。
- 禁水性物質を取り扱っている施設は特に注意しよう。
ということです。
混合危険がある物質の中には、市街地から遠く離れた場所で保管されたり製造されたりするものもあります。
しかし、混合危険を起こす恐れのある物質同士ならば、街中でも保管されていたりすることは珍しくないのです。
たとえ少量ずつでも、爆発したり発火したりすれば大事故になるでしょう。
ですから、危険物取扱者の資格保持者はほかの従業員に危険性をよく教えておいてください。
また、前述もしましたが絶対に一緒に保管したり運搬したりしてはいけません。