「粉塵爆発」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。
実は、日本で起きている爆発事故の原因は、ガスと粉塵がほとんどなのです。
では、いったいなぜ粉塵爆発は起きるのでしょうか?
そこで、今回は粉塵爆発の原理や防止対策をご紹介します。
粉塵爆発の恐ろしさは、粉状のものであれば何でも起こす可能性があること。
通常ならば全く危険性のないものが、爆発することもあるのです。
危険物を扱っている場所に勤めている人だけではなく、粉状のものをたくさん取り扱っている場所に勤めている方はぜひこの記事を読んでみてくださいね。
目次
- 粉塵爆発とは?
- 粉塵爆発の原理とは?
- 金属粉が危険物に指定されているのはなぜ?
- 粉塵爆発の防止対策とは?
- おわりに
1.粉塵爆発とは?
粉塵爆発とは可燃性の固体粒子が一定の条件下の空気中に浮遊しているときに、発火源が近くにあると発生する爆発のことです。もう少し分かりやすくいうと、火をつけると燃える粉が空気中に漂っているとき、一定の条件を満たせば爆発するということ。「可燃性の粉塵というと、石炭の粉のようなもの?」と思う方もいるでしょう。
確かに、粉塵爆発は炭鉱で発生しやすいです。
坑道など限られた場所に石炭の粉が激しくまうと、粉塵爆発が起こりやすいでしょう。
炭鉱で起こる爆発事故の原因は、ガスと粉塵だったのです。
しかし、「可燃性の粉塵」というのは、皆様が考えている以上にたくさんあります。
たとえば、小麦粉や砂糖も可燃性の粉塵です。
料理中に砂糖や小麦粉を巻き上げてしまった経験がある方もいるでしょう。
また、コーンスターチなどのでんぷんや金属の粉、さらにコピー機に使われるトナーの粉、粉薬でも粉塵爆発は起こるのです。
危険物を製造したり取り扱っていたりする場所ならば、防火対策がしっかりしているでしょう。
しかし、食品工場や製薬工場などは、危険物を取り扱う工場よりは防火設備が不十分なところが多いです。
ですから、そのような場所で粉塵爆発が起こると、大規模な被害が発生することもあります。
2.粉塵爆発の原理とは?
粉塵爆発は、粒子が空気中にただ漂っているだけでは起こりません。
粉塵爆発が起こるには、
- 粉塵雲
- 酸素
- 着火元
の3つがそろうことが必要です。
粉塵に何かの拍子で火がつくと、その燃焼が次々と伝播(でんぱ)していくことで爆発が起きます。
粉塵雲とは、爆発が伝播(でんぱ)していくのにちょうどいい密度になっている粒子の固まりのこと。
ちなみに、粒子の間隔が離れていると、燃焼が伝播(でんぱ)せずに爆発は起こりません。
また、粒子が密集しすぎても酸素が不足して爆発が起こらないのです。
この粒子の濃度が最も低いものを「爆発下限濃度」といい、粒子の間がちょうどよくあいているものを「爆発上限濃度」といいます。
酸素というのは空気がある場所のことです。
坑道など何らかの原因で酸素濃度が低下している場合は爆発が起こりません。
最後に着火元についてご説明しましょう。
火の元というと、マッチやライターの火を思い浮かべる人が多いですが、摩擦熱(まさつねつ)や静電気も火元になります。
実際に起きた事故を例に取ると、まいあがった粉塵にベルトコンベアーの摩擦で着火して爆発しました。
ですから、機械を導入していて粉状の物質を扱っている工場は、粉塵爆発の危険性がゼロではありません。
また、静電気も怖いです。
粉塵がまっている室内に入ろうとして、手と金属の間に火花が散った瞬間に爆発が起きた例もあります。
ですから、静電気対策も大切になるのです。
3.金属粉が危険物に指定されているのはなぜ?
現在の消防法では、金属粉が危険物の第2類と第3類に指定されています。
金属は可燃物ではありません。
しかし、表面に酸化膜が形成されない種類の金属は、細かい粒子になると空気に触れただけで粉塵爆発を起こすのです。
ですから、金属粉は危険物に指定されています。
また、金属粉が発生する工場などでは粉塵爆発の対策も行わなければなりません。
ちなみに、金属粉が熱を持つ仕組みを利用したのが、「ホッカイロ」などの商品名で販売されている携帯用の使い捨てカイロです。
これは、鉄粉と塩類と水を反応させて鉄を酸化させることで発熱させます。
4.粉塵爆発の防止対策とは?
粉塵爆発が起こるには、粒子が一度にたくさんまいあがらなくてはなりません。
ですから、ご家庭にある小麦粉や粉砂糖、粉薬などがまいあがっても粉塵爆発が起こることはないのです。
しかし、その一方で粉状の物質を扱っている工場ならば、どこでも粉塵爆発が起こる可能性があります。
では、粉塵爆発の防止対策はどのようなものでしょうか?この項でご紹介します。
4-1.爆発防護装置をつける
爆発防護装置とは、粉塵爆発を防いだり万が一爆発が起こったときに被害を最小限に食い止めたりする装置のことです。
今は粉状の物質を扱っている工場では、このような装置がつけられているところがほとんどでしょう。
ですから、万が一粉塵爆発が起こっても、被害を最小限に食い止められるようになっています。
しかし、爆発防護装置が作動しなければ意味がありません。
ですから、定期的な点検やメンテナンスが大切になります。
4-2.専門の会社に調査を依頼する
知らない間に粒子が発生して粉塵爆発が起こる、という可能性がわずかですが存在します。
ですから、粒子が発生する可能性がある職場は、専門の会社に調査を依頼しましょう。
空気中の粒子を調べて、爆発防護装置の装着が必要かどうかを教えてくれます。
4-3.カラーパウダーに気をつける
カラーパウダーとは、最近人気がでてきた色つきの粉のことです。
原料はコーンスターチで、色は食物由来の色素で染められています。
ですから、体に全く無害ということで、イベントなどでまかれることが多いのです。
ペイントをするよりも始末が簡単でしかも広範囲にまけるということで、マラソンやコンサートなどでも使われます。
しかし、このカラーパウダーが原因で2015年に粉塵爆発事故が起こりました。
ですから、これからカラーパウダーをイベントで使うという場合は、散布する量や場所にじゅうぶん注意してください。
また、カラーパウダーをまく会場では、喫煙を禁止しましょう。
タバコの火は格好の着火元になります。
また、ライターやマッチの炎も危険です。
さらに、カラーパウダーを散布する場所では、万が一の事故に備えて長袖長ズボンを着用するように参加者に呼びかけましょう。
5.おわりに
いかがでしたか?
今回は粉塵爆発の原理や対策についてご紹介しました。
まとめると
- 粉塵爆発は可燃性の粒子ならば、どんなものでも爆発する可能性がある。
- 不燃性の金属粉も爆発の危険性がある。
- 粉塵爆発は防護装置をつけておこう。
- カラーパウダーの散布にはじゅうぶん気をつける。
ということです。
2015年に台湾で発生したカラーパウダーの粉塵爆発事故で、その怖さを知った方も多いでしょう。
粉塵爆発は、今までたくさんの人の命を奪ってきました。
ですから、対策方法もいろいろと考えられているのです。
大規模な製粉会社などは、粉塵爆発の対策をホームページで公開しています。
興味がある方はご覧になってください。
また、カラーパウダーは素人でも簡単に入手でき、散布も制限がありません。
これからハロウィンやクリスマスなどのイベントで、散布されることも多いでしょう。
散布する際は、量と場所をよく考えてください。
また、絶対にタバコを吸っている人の上に散布してはいけません。