危険物取扱者の資格試験の勉強をしていると、「有機化合物」という単語をよく目にすると思います。
世の中に存在する化合物は、「有機化合物」と「無機化合物」に分かれているのです。
そこで、今回は有機化合物の特徴や種類についてご説明します。
危険物取扱者の資格試験の勉強はほとんどが暗記です。
でも、化学の知識があれば暗記もよりしやすいでしょう。
また、危険物と有機化合物の関係についてもご説明します。
これから危険物取扱者の資格取得を目指している方は、ぜひこの記事を読んで参考にしてみてくださいね。
目次
- 有機化合物とは?
- 有機化合物の種類とは?
- 有機化合物と危険物の関係
- 第4類危険物以外に、有機化合物は危険物に含まれていないの?
- 危険物取扱者甲類や乙類を複数受ける際は注意しよう
1.有機化合物とは?
化合物とは、ふたつ以上の元素が化学結合で結びついた純物質のことです。
一例をあげると、水は水素原子と酸素原子が結びついたもの。
また、水を見てもわかるように、元素同士が結びついた化合物は元素とは全く別の性質のものになります。
さて、化合物はさらに「有機化合物」と「無機化合物」に分かれるのです。
このふたつの違いは炭素の有無。炭素が含まれていると有機、含まれていないと無機になります。
ただし、一酸化炭素、二酸化炭素のように単純な炭素の化合物は、慣習的に「無機化合物」に分類されるのです。
ですから、炭素原子が含まれているので有機化合物というわけではありません。
覚える際は注意しましょう。
2.有機化合物の種類とは?
では、有機化合物にはどのようなものがあるのでしょうか?
この項では有機化合物の種類と、分類の仕方についてご説明しましょう。
2-1.結合の仕方で分類する
化合物は元素同士が結合した物質ですが、単純に横につながっているだけではありません。
有機化合物は、炭素原子(原子記号はC)が鎖状に結合している「鎖式(さしき)化合物」と原子同士が円形に結合している構造を含む、「環式(かんしき)化合物」があるのです。
また、炭素原子が単体で結合している「飽和化合物」と二重結合、三重結合を含む「不飽和化合物」にも分類できます。
このように分類することで、似たような骨格を持つ化合物同士を分けられるのです。
2-2.官能基による分類
「官能基」とは、化合物群に特有な性質を与える原子団のことです。
官能基は、有機化合物しかありません。
ですから、官能基があることイコール有機化合物なのです。
官能基で種類を分けることにより、同じ性質を持つ化合物同士を分類することができます。
官能基の一例をあげると「ケトン基」「ニトロ基」などです。
危険物の勉強をしていると、見たことのある言葉が出てくると思います。
3.有機化合物と危険物の関係
有機化合物は前述したように、炭素原子を含んでいます。
ということは、燃えやすいのです。
また、融点や沸点が多いのも有機化合物の特徴。
さらに、水には溶けにくいが有機溶媒には溶けるという性質を持っています。
このような性質をどこかで見たことはありませんか?
そうです、第4類危険物です。
第4類危険物は「引火性液体」に分類されます。
私たちの最も身近な危険物である、ガソリンや灯油などもこの第4類危険物なのです。
また、ガソリンや灯油の原料である石油は、別名化石燃料と言われています。
この「化石」とは博物館に飾ってあるようなものではありません。
藻やプランクトンといった生物の死骸に土砂が積もって岩石になる途中で、石油ができるのです。
藻やプランクトンは生物ですから、当然炭素が含まれています。
ですから、石油にも炭素が含まれているのです。
そう考えると、有機化合物の特徴である「燃えるものが多い」「非電解質のものが多い」「水に溶けないが、有機媒体に溶けるものが多い」というのは、そのまますべて第4類危険物の特徴にも当てはまっています。
4.第4類危険物以外に、有機化合物は危険物に含まれていないの?
第4類以外にも、第2類、第3類、第5類には有機化合物が指定されています。
特に、第4類と混乱しやすいのは危険物第2類でしょう。
危険物第2類は「引火性固体」です。
引火性固体とは、固形アルコールなど、1気圧で引火点が40度未満のものを指します。
固形アルコールのほかには、ゴムノリやラッカーパテが該当するのです。
ゴムノリというのは、タイヤがパンクしたときに修理に使ったり、ゴム製品の接着に使ったりするノリのこと。
家庭用にも販売されていますので、家にある方も多いと思います。
また、ラッカーパテはプラモデルの塗装などにも使われているのです。
こちらも、ごく普通に販売されているので、家にあるという方も多いでしょう。
ラッカーパテやゴムノリもそれぞれトルエンやベンゼンなど石油系有機溶剤が原料です。
つまり、石油製品の一種。
ですから、有機化合物になります。
また、「危険物が普通に販売されていても大丈夫?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、危険物を取り扱ったり保管したりする際に死角が必要なのは、指定数量を超えた場合のみです。
家庭用に販売されているゴムノリやラッカーパテは、せいぜい数十グラムでしょう。
ですから、問題はありません。
しかし、ゴムノリもラッカーパテも引火点が10度以下と大変低いのです。
つまり、常温でも火をつければ燃えます。
火の近くで使用したり、タバコなどを吸いながら扱ったりしないように注意してください。
なお、喫煙率が今よりもずっと高かった30年ほど前までは、タバコの火がラッカーパテに引火して火事になることも珍しくありませんでした。
5.危険物取扱者甲類や乙類を複数受ける際は注意しよう
危険物取扱者にはすべての危険物を取り扱える「甲類」と、受かった類の危険物を取り扱える「乙類」があります。
乙類を一種類だけ受験するならば、勉強範囲もそれほど広くありません。
出てくる有機化合物の種類も限られています。
しかし、甲類や乙類を複数受ける方は出題範囲も広く、出てくる有機化合物もたくさんあるでしょう。
ですから、「有機化合物」を機械的に覚えるのではなく、特徴を覚えることでより理解しやすくなります。
甲類を受験するには、受験資格が必要ですから有機化合物の特徴なども知っている方は多いでしょう。
でも、乙類は受験資格がありません。学生や大学で化学を専攻した人でなくても受験できます。
ですから、有機化合物の大きなくくりで特徴を覚えておきましょう。
そうすれば、ここの化学物質の特徴も覚えやすくなります。
おわりに
いかがでしたか?
今回は有機化合物の種類や特徴をご説明しました。
まとめると
- 有機化合物は炭素を含んだ化合物のことである。
- 一酸化炭素など、単純な炭素の化合物は有機化合物ではない。
- 石油が原料の化合物はほぼ有機化合物である。
- 有機化合物は引火点や融点が低いので、危険物に指定されることが多い。
ということです。
有機化合物は私たちの回りにたくさんあります。
また、炭素は燃えるものが多いので炭素を多く含む化合物ほど危険物に指定されやすいでしょう。
そう考えると、危険物の物質名も暗記しやすくなるのです。
また、官能基も覚えておくと危険物の性質がよりわかりやすくなります。
まるで暗号のような化学物質名が覚えられないという場合は、有機化合物で一くくりにし、さらに官能基で分類して特徴を覚えておくと暗記しやすくなるでしょう。
甲類を受ける方や乙類を複数受験する方はぜひ参考にしてみてください。