危険物を貯蔵する場所では、消防法に基づいた管理をしなければなりません。きちんと法律のに沿った管理をしなければ、火災や爆発などの大事故につながります。地下に危険物を貯蔵する「地下タンク貯蔵所」も危険物の保管場所になるため、徹底した管理と点検が必要です。特に、点検は安全を維持し続けるために必要な作業になります。
そこで、本記事では、危険物の地下タンク貯蔵所について、点検内容や危険物取扱者など詳しく説明しましょう。
- 危険物の地下タンク貯蔵所について
- 危険物の地下タンク点検について
- 危険物に関係する資格について
- 危険物取扱者の試験について
- 危険物取扱者資格の勉強法について
- 危険物の地下タンク貯蔵所に関してよくある質問
この記事を読むことで、危険物の地下タンク貯蔵所における基礎知識を身につけることができます。危険物の地下タンクの点検について知りたい方や試験を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
1.危険物の地下タンク貯蔵所について
危険物を正しく取り扱い、保管するためには、地下タンク貯蔵所がどのようなものか知ることが大切です。ここでは、危険物の地下タンク貯蔵所の基礎知識について解説します。
1-1.危険物保管の地下タンク貯蔵所とは
地下にある危険物保管所・貯蔵所のことを地下タンク貯蔵所といいます。一般的に、危険物を貯蔵するのは地上ですが、保管場所が確保できない場合は地下に設けられるものです。地下タンク貯蔵所を設置するには、構造・設備・配管など基準が定められています。
1-2.地下タンクの基準
危険物の保管場所は、火災・爆発が簡単に起きないよう工夫を施しておかなければなりません。地下タンクの構造・設備・配管について詳しく説明しましょう。
1-2-1.構造
タンクの厚さや塗装など、地下タンクの構造は細かく決められています。主に、以下の条件をクリアしておかなければなりません。
- 危険物の量を自動表示するための装置を設置する
- 錆(さび)止めの塗装を施す
- タンクは厚さ3.2ミリメートル以上の鋼板を使用する
- 厚さが0.3メートル以上の鉄筋コンクリートでふたをする
- タンクの頂部は地盤面から0.6メートル以上になるようにする
- タンク室の壁と床は厚さ0.3メートル以上のコンクリートにする
- タンクとタンク室の間は0.1メートル以上の間隔を保ち、乾燥砂をつめる
1-2-2.設備
地下タンクの構造と同じく、設備に関しても細かい決まりがあります。主に挙げられる設備基準は、以下のとおりです。
- 漏えい検査管:タンクの周囲に危険物の漏れを検知するための設備(漏えい検査管)を4つ以上取りつける
- 通気管:タンクに通気管を設け、通気管は地盤面から4メートル以上の高さにする
- 消火設備:第5種消火設備(小型消火器・乾燥砂など)を2個以上設置する
1-2-3.配管
危険物は空気を汚染させる物質もあります。もし、漏れた場合は外部に広がらないよう、気をつけなければなりません。そこで、重要になるのが配管です。配管は素材から定められています。
- 配管の素材は強度のある材質を使う
- 配管にかかる最大常用圧力の1.5倍以上の圧力水圧実験を行い、漏えいなど異常がないかどうか確認する
- 配管の結合部分から漏れていないかどうか点検できるようにする
- 地盤にかかる重量が配管に影響しないよう保護する
1-3.どんな施設に造られるのか?
地下タンク貯蔵所は、地上に最適な保管場所が見つからない場合に造ります。危険物を保管するには、保管場所の周囲に建物がない場所が好ましいです。そのため、場所が十分に確保できない場合は地下に貯蔵所を設置します。
2.危険物の地下タンク点検について
危険物を安心・安全に保管し続けるためには、点検が必要です。定期的に点検を実施することで、安全性が確保でき、異常にいち早く気づくことができます。では、地下タンク貯蔵所の点検はどんな内容なのか、詳しく説明しましょう。
2-1.点検の必要性
危険物の漏れを防ぐために、点検は必要です。危険物の管理を怠ると、貯蔵タンクから漏れてしまいます。実際、危険物が漏れたことによる火災・爆発の発生も起きているのです。危険物の保管不備による事故を防ぐためにも、定期的な点検が必要になります。
2-2.地下タンクの点検に準拠する法律
地下タンク貯蔵所の点検は、消防法第14条の「危険物施設の定期点検」で定められています。すべての危険物製造所など所有者は、構造および設備の技術基準を維持する義務が課せられているのです。定期的に点検し、作成した点検記録を一定期間保存しなければなりません。
2-3.定期点検について
地下タンク貯蔵所の定期点検は、原則として1年に1回以上です。地下タンク貯蔵所によって定期点検の頻度が異なるため、詳細は消防法をご確認ください。また、点検内容は「位置、構造および設備が技術上の基準に適合しているか」「漏れの点検」です。特に、漏れの点検は地下貯蔵タンクにおいて、重要な項目になります。主に、ガス・液体により、タンクや配管に気密漏えいがないかどうかの確認です。具体的な方法は、地下貯蔵タンク等および移動貯蔵タンクの漏れの点検に係る運用上の指針についてで記載されています。ぜひチェックしてみてください。また、3年間保存しなければならない点検記録は、以下の項目を記載することになっています。
- 点検を実施した製造所の名称
- 点検の方法及び結果
- 点検年月日
- 点検を行った危険物取扱者もしくは危険物施設保安員、点検に立ち会った危険物取扱者の氏名
2-4.点検を行うための資格とは?
危険物を貯蔵・製造・保管している場所の点検は、危険物を取り扱うために必要な資格者でなければなりません。点検ができる資格は、危険物取扱者・危険物施設保安員・危険物取扱者の立ち会いを受けた者です。
2-5.罰則について
消防法に基づいた点検が実施されていない場合、法律違反になります。そのため、製造所・貯蔵所の責任者は罰則を課せられることになるのです。たとえば、点検記録を作成しない場合は30万円以下の罰金または拘留になります。
3.危険物に関係する資格について
危険物に関する施設の点検ができる者は、危険物取扱者・危険物施設保安員になります。また、関連する資格として危険物保安監督者についても説明しましょう。
3-1.危険物取扱者
危険物の取り扱いができる資格といえば、危険物取扱者が代表的です。危険物取扱者の資格は、甲種・乙種・丙種(へいしゅ)の3種類があります。資格の種類によって扱える危険物が異なるため、試験を受ける際は注意が必要です。それぞれが扱える危険物を以下にまとめてみました。
- 甲種:第1類~第6類まですべての危険物が取り扱い可能
- 乙種:免状を取得した類の危険物だけ取り扱い・立ち会いが可能
- 丙種(へいしゅ):第4類危険物のうち特定の危険物だけ取り扱いが可能
また、危険物の種類は以下のとおりです。
- 第1類危険物:酸化性固体(塩素酸塩類・亜塩素酸塩類など)
- 第2類危険物:可燃性固体(硫化りん・硫黄・金属粉など)
- 第3類危険物:自然発火性物質および禁水性物質(アルキルアルミニウム・黄りんなど)
- 第4類危険物:引火性液体(ガソリン・石油・アルコール類など)
- 第5類危険物:自己反応性物質(ニトロソ化合物・アゾ化合物など)
- 第6類危険物:酸化性液体(過塩素酸・硝酸など)
3-2.危険物保管監督者
危険物保安監督者は、危険物の取り扱い作業における保安監督業務を担当します。危険物保安監督者になるには、甲種危険物取扱者・乙種危険物取扱者としての実務経験が6か月以上なければなりません。乙種の場合は、免状を取得した類の危険物保安監督者になります。
3-3.危険物施設保安員
危険物施設保安員は、主に、危険物保安監督者の補佐を行います。危険物施設保安員にはほかの役職と異なり、選任されるために必要な資格がありません。しかし、危険物取扱者を取得している者から選ばれることがほとんどです。危険物保安監督者の補佐業務を行うためにも、専門的な知識が必要になるでしょう。
4.危険物取扱者の試験について
危険物を取り扱う場所で必要不可欠な資格が、危険物取扱者です。では、危険物取扱者は一体どうすればなれるのでしょうか。試験資格や試験概要など詳しく説明します。
4-1.試験資格
乙種・丙種(へいしゅ)は年齢・性別に関係なく、誰もが受験できます。しかし、甲種危険物取扱者に関しては、一定の資格が必要です。甲種の受験ができる者は以下の条件に当てはまる者だけになります。
- 大学等において化学に関する学科等を修めて卒業した者
- 大学等において化学に関する授業科目を15単位以上修得した者
- 乙種危険物取扱者免状を有する者
- 修士・博士の学位を有する者
4-2.試験概要
それでは、試験の申し込み方法や試験日・試験地・受験料など詳しく説明しましょう。
4-2-1.申し込み方法
危険物取扱者の試験申し込み方法は、書面申請と電子申請の2つがあります。書面申請の場合は、資格の種類ごとに必要な書類をそろえ、受付期間内に申請してください。申請窓口は試験を主催している一般財団法人消防試験研究センターの各都道府県支部・中央試験センターです。願書など必要な書類は、各センターで無料配布されています。一方、電子申請の場合は、ホームページから申請可能です。
4-2-2.試験日
試験日は試験実施場所によって異なります。前期(4月~9月)と後期(10月~3月)にわかれており、中央試験センターなどでは月に2~3回実施されているのです。詳細は、ホームページからご覧ください。
4-2-3.試験地
危険物取扱者の試験地は、各都道府県の消防試験研究センター支部です。東京都だけは、中央試験センター主催になります。申し込みをする際も受験地となるセンターに申請することになるので、注意してください。
4-2-4.受験料
危険物取扱者の受験料は、資格の種類によって異なります。甲種・乙種・丙種(へいしゅ)それぞれの受験料は以下のとおりです。また、支払い方法は郵便局の窓口で行います。
- 甲種:5,000円
- 乙種:3,400円
- 丙種(へいしゅ):2,700円
4-3.試験科目
試験科目も資格の種類によって異なるため、自分が受ける資格の科目を確認しておきましょう。各試験の科目は以下のとおりです。
甲種
- 危険物に関する法令(15問)
- 物理学および化学(10問)
- 危険物の性質ならびに火災予防および消火の方法(20問)
乙種
- 危険物に関する法令(15問)
- 基礎的な物理および基礎的な化学(10問)
- 危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法(10問)
丙種(へいしゅ)
- 危険物に関する法令(10問)
- 燃焼および消火に関する基礎知識(5問)
- 危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法(10問)
4-4.実務経験・実地試験
試験を受けるために実務経験は必要ありません。また、試験も筆記試験だけで実地試験はないので安心してください。ただし、甲種を受験する際は乙種危険物取扱者として実務経験2年以上でなければなりません。
4-5.難易度・合格率
気になる危険物取扱者の難易度ですが、「やや易しい~普通」レベルです。近年の合格率を見てみると、甲種がおよそ30%・乙種がおよそ50%・丙種(へいしゅ)がおよそ40%になっています。試験範囲が広く、豊富な知識量を必要とする甲種の難易度がやや高いです。
4-6.問い合わせ先
試験に関する問い合わせは、主催の消防試験研究センターにお願いします。本部・各都道府県の支部では質問を受けつけているので、ぜひ尋ねてみてください。お問い合わせ方法は電話になります。
5.危険物取扱者資格の勉強法について
危険物取扱者の試験を合格するためには、毎日勉強を続けることが大切です。やや易しい難易度だとしても、勉強しなければ一発合格は望めません。受験対策や講習・学習のコツなど詳しく説明しましょう。
5-1.受験対策
何よりも、毎日地道にコツコツと勉強することが受験対策になります。休日一気に勉強に費やすという方はいますが、毎日数分間でも勉強したほうが記憶しやすいです。仕事の休憩時間や移動時間など、隙間時間を勉強に活用していきましょう。
5-2.学習時間
学習時間は長いほうが試験に対する安心感も大きくなります。しかし、毎日仕事で忙しい日々を送っていると、なかなか学習時間が確保できませんよね。そんなときは、早起きをして毎朝30分勉強をしたり、寝る前にテキストを数十分読んだりと計画を立てましょう。時間はつくるものなので、テレビを見る時間を勉強に費やすなど工夫をしてください。
5-3.過去問・テキスト・参考書
勉強に必要な過去問・テキスト・参考書選びに悩んでいる方は多いでしょう。参考書を数冊購入する方はいますが、1冊だけにしてください。なぜなら、1冊を何度も読み返したほうが頭の中に入りやすいからです。また、テキスト・参考書を選ぶ際は自分にとってわかりやすい内容のものにしましょう。試験に出てくる重要ポイントを押さえているかどうかも重要です。過去問は消防試験研究センターにて公開されているので、そちらでチェックしてください。ちなみに、代表的な参考書をいくつかピックアップしてみました。
一発合格!乙種1・2・3・4・5・6類危険物取扱者試験テキスト&問題集/著・赤染元治/ナツメ社
わかりやすい!甲種危険物取扱者試験大改訂版/著・工藤政孝/弘文社
チャレンジライセンス 丙種危険物取扱者テキスト新訂版/著・工業資格教育研究会/実教出版
5-4.独学か、受講か
独学か、それともスクールに通って受講するか悩む場合、自分のライフスタイルを考えてみてください。仕事が忙しく、毎日スクールに通えない場合は受講料がもったいないです。スクールは時間が決まっているので通えないケースも出てくるでしょう。逆に、独学は自分でわからないところも解決しなければなりません。先生がいないので質問もできないのが欠点です。
6.危険物の地下タンク貯蔵所に関してよくある質問
危険物の地下タンク貯蔵所に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。
6-1.日常点検の内容は?
危険物による事故防止や異常の早期発見には“日常点検”が重要な役割を果たします。定期点検はもちろんのこと、毎日できる日常点検も大切です。主に、始業・終業時の設備機器点検や危険物の在庫管理を行います。
6-2.定期点検の記録表が知りたい
定期点検の記録表は、総務省消防庁のホームページで確認できます。「製造所等の定期点検に関する指導指針の整備について」で記載されているので、ぜひチェックしてみてください。記録表に基づきながら点検を行うと良いでしょう。
6-3.「漏れの点検」の方法は?
地下タンク貯蔵所の大切な点検項目、「漏れの点検」方法は、危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示で提示されています。主に、ガス加圧法・液体加圧法・微加圧法・微減圧法などで行う点検です。
6-4.点検で異常が見つかった場合はどうすべきか?
定期点検で異常が見つかった場合は、すぐさま消防・消防本部予防課へ連絡しなければなりません。迅速に適切な処置をしなければ、火災・爆発などの事故に発展します。また、異常の原因も追求しなければなりません。
6-5.免状を受けると講習を受けなければならないのか?
危険物取扱者の免状交付を受けている者は、定められた期間内に講習を受けなければなりません。講習を受講した日から3年以内の受講が必要です。受講しなかった場合は、危険物取扱者免状を返納しなければならなくなるため、注意してくださいね。
まとめ
地下に危険物を貯蔵している施設を地下タンク貯蔵所といいます。地下タンク貯蔵所は細かい構造の決まりがあり、点検をするには資格が必要です。危険物貯蔵・製造・保管場所で働く方は、危険物取扱者の資格を取得しましょう。危険物取扱者は、危険物を取り扱う代表的な資格です。甲種・乙種・丙種(へいしゅ)と3種類の資格によって、扱える危険物が異なります。自分が扱いたい危険物を把握したうえで、適切な資格を受験しましょう。事前に試験概要を把握しておけば、勉強時間を有意義に使って、資格取得ができますよ。