危険物とは、消防法で指定されている保存や保管の仕方が悪いと発火や爆発の危険がある物質です。
今回ご紹介するヒドロキシルアミンは、危険物第5類に指定されている物質になります。
この物質が危険物に指定されたのは15年ほど前のこと。
いったいどのような性質があるのでしょうか?
保管方法や取り扱う際の注意点とともにご紹介しましょう。
危険物取扱者の資格取得を目指している方だけでなく、長年ヒドロキシルアミンを取り扱ってきた会社の方も必見ですよ。
- ヒドロキシルアミンの性質とは?
- ヒドロキシルアミンが危険物になった経緯とは?
- ヒドロキシルアミンの保管方法や消火方法の注意点とは?
- ヒドロキシルアミン水溶液は安全?
- 従業員の安全意識を高めよう
- おわりに
1.ヒドロキシルアミンの性質とは?
ヒドロキシルアミンとは、NH2OH と化学式に表される無機化合物です。
水とアンモニアが互いに一部分を共有したような構造をしています。
純粋なヒドロキシルアミンは、白色の結晶で、水やアルコールによく溶けるという性質があるのです。
このヒドロキシルアルミンは、強い還元作用があり半導体の洗浄に使われてきました。
また、農薬やナイロンの原料などにも使用されています。
写真の現像液としても利用されているので、工場だけでなく街中の写真店や写真現像サービスを行っている店舗でも使用されていることもあるでしょう。
さらに、酸化防止剤の作用もあるため、毛皮などを加工する場所でも使用されています。
なお、ヒドロキシルアミンには蒸気に毒性があるのです。
吸引すれば、目や気道に強い刺激を感じるでしょう。
大量に吸いこめば血液の酸素吸引力を低下させて、最悪の場合死に至ります。
ヒドロキシルアミンの蒸気は空気より重いので、万が一蒸気が発生した場合は床付近の換気をしっかりと行いましょう。
2.ヒドロキシルアミンが危険物になった経緯とは?
ヒドロキシルアミンが危険物に指定されたのは、2000年のことです。
ヒドロキシルアミンは高温になると爆発的に燃焼することはよく知られていましたが、その危険性についてはまだ判明していませんでした。
しかし、2000年にヒドロキシルアミンを取り扱っていた化学工場が爆発延焼事故を起こし、従業員や周辺に住む住民に多数の被害者が出たのです。
それをきっかけに、ヒドロキシルアミンは危険物第5類に分類されました。
ちなみに、危険物第5類とは、自己反応性物質を指します。
自己反応性物質とは分子の中に酸素分子を有する可燃性の固体のことで、不用意に保管しておくと分解が始まって自然発火することもあるのです。
つまり、火の気がなくても発火する恐れがあります。
自己反応性物質の中にはダイナマイトの原料でもあるニトログリセリンなども含まれているのです。
ヒドロキシルアミンも、もちろん保管方法が悪いと発火する恐れがあるでしょう。
3.ヒドロキシルアミンの保管方法や消火方法の注意点とは?
では、ヒドロキシルアミンの保管方法や消火方法はどうしたらよいのでしょうか?
この項では、ヒドロキシルアミンを取り扱う際の注意点をご紹介していきます。
3-1.ヒドロキシルアミンの保管方法とは?
ヒドロキシルアミンは、空気中の水分を取りこんで勝手に水溶液化する潮解性があります。
ですから、結晶化したまま保管するためには、乾燥した場所に保管しましょう。
危険物は冷暗所に保管されることが一般的ですが、日あたりの悪い場所は湿気が強いことも多いので、湿度計を置くなどして管理してください。
また、ヒドロキシルアミンは紫外線を照射すると爆発します。
ですから、日光に当てずに密封して保管してください。
運搬する場合も同じです。
透明な容器に入れると紫外線があたってしまうので、必ず不透明な容器に入れましょう。
3-2.ヒドロキシルアミンの消火方法
ヒドロキシルアミンは高温になると自然発火するのです。
危険物第5類は、いったん火がつくと爆発炎上して消火困難になることが多いですが、ヒドロキシルアミンの場合は冷水で消火できます。
ただし、前述したように蒸気が有害ですので必ずマスクや手袋をして消火にあたってください。
また、消防に通報する場合は必ず燃えているものがヒドロキシルアミンであることを伝えましょう。
そうしないと、消火にあたる消防士に二次被害が発生することもあります。
また、ヒドロキシルアミンを保管した場所の近くに火災が発生した場合は、日光に当てないようにして避難させましょう。
場合によってはヒドロキシルアミンが発火する前に付近の住民を避難させる必要があります。
4.ヒドロキシルアミン水溶液は安全?
ヒドロキシルアミンは、50%の水溶液で販売されています。
この状態のヒドロキシルアミンは安定性が高く、自己分解は起こりません。
ですから、ヒドロキシルアミンを扱っているとはいっても、濃度が50%の水溶液ならばまず安全でしょう。
ただし、ヒドロキシルアミンの濃度が高まったり、鉄イオンなどの異物が混入したりしていると自己分解が促進されてしまいます。
ですから、ヒドロキシルアミンの水溶液を取り扱っている業者は、金属粉などが混入しないように気をつけましょう。
意外なものにも金属は使われています。
また、目に見えないほど細かい金属粉もあるのです。
ですから、知らないうちに金属粉が混入していた場合は、保管庫で自己分解が進んで発火する危険もあります。
5.従業員の安全意識を高めよう
ヒドロキシルアミンは、まだ危険物に指定されて日が浅い物質です。
また、濃度50%の水溶液の状態ならば、安定していますから取り扱いもずさんなものになっているかもしれません。
ですから、長年ヒドロキシルアミンを取り扱ってきた会社ほど、従業員の安全意識を高めましょう。
ヒドロキシルアミンの爆発事故は1990年代後半から2000年代にかけて、日本でも何件か起こっています。
爆発炎上事故が起これば従業員だけでなく、付近の住民にも被害が及ぶ可能性もあるのです。
ですから、取り扱いがずさんな会社は、一度講習会などを開いて取り扱い方を改めましょう。
また、写真店などをかつて経営していた場所などでは、ヒドロキシルアミンの水溶液が残っているという場合もあります。
前述したように、濃度が50%までの水溶液ならば安全です。
製造元に問い合わせて処分の仕方を聞きましょう。
万が一、結晶の状態で残っている場合は日光があたらない場所に保管して、同じように処分方法を問い合わせてください。
6.おわりに
いかがでしたか?
今回は、ヒドロキシルアミンの取り扱い方や性質などをご紹介しました。
結晶化していれば危険な物質ですが、水溶液の状態ならばそれほど問題はないでしょう。
しかし、保管方法が悪いと水分が蒸発したりして濃度が高まる可能性があります。
濃度が70%を超えると自己分解が促進される、という実験結果が出ているのです。
安全管理が徹底されている現代でも爆発炎上事故が起こる理由は、保管方法が悪いとヒドロキシルアミンの自己分解が進むからでしょう。
ですから、危険物取扱者の資格を持って管理を任されている場合は、定期的に確認をしてください。
特に、長い間使われていない水溶液の場合は、水分が蒸発している場合もあります。
また、金属粉の混入も同じように気をつけてください。
さびも金属粉の一種です。
ヒドロキシルアミンは強い還元作用がありますので、さびが落ちただけでも危険でしょう。
危険物は火気をさけるために金属製の保管庫に保管されていることも多いですが、保管庫の管理も忘れないでください。