電気防食の原理や種類とは? 分かりやすくご説明します。

私たちが利用する建造物の多くが、金属で作られています。
金属は頑丈ですが、「腐食」という弱点があるのです。
特に海中や土の中、海の近くで使われている金属製品は腐食しやすいでしょう。
それを防止する方法のひとつが「電気防食」です。
今回は、電気防食の種類や原理をご紹介しましょう。
電気防食の原理が分かれば、職場でも役に立つことがあるかもしれません。
電気防食の原理や種類について知りたいという方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。

目次

  1. 金属の腐食と防食とは?
  2. 電気防食の原理とは?
  3. 電気防食のメリットとは?
  4. 電気防食の種類とは?
  5. おわりに

1.金属の腐食と防食とは?

まず始めに、金属の腐食と防食の原理についてご紹介しましょう。
金属製の製品が腐食するのはなぜでしょう?

1-1.金属の腐食とは

金属の腐食とは、表面が酸化還元反応によって電子がイオン化して金属面から脱落していくことをいいます。
しかし、この説明だけで腐食の原理を理解できる方は少ないでしょう。
金属をほったらかしにしておくと、さびが浮きます。
鉄ならば赤さびが浮きますし、十円玉に「緑青(ろくしょう)」と呼ばれる青いさびが浮く場合もあるでしょう。
このさびこそイオン化した金属表面の電子なのです。
腐食は空気中でも水などの液体の中に入れてもおきます。
腐食した金属は強度が落ちたり穴が開いたりするのです。
さびた鉄棒などが、ぼろぼろに崩れていくのを見たことがある人もいるでしょう。

1-2.金属の防食とは?

金属が腐食すれば、強度が大幅に落ちます。
金属が腐食する条件はいろいろありますが、鉄ならば空気に触れたり塩水に浸(つ)かったりしていればさびやすいでしょう。
私たちの身の回りにある大型建造物は、ほとんどが金属製です。
特に橋や道路などは腐食によって強度が落ちれば、大変なことになるでしょう。
このような大型建造物は定期的に点検が行われますが、腐食対策を立てる必要はあります。
金属の腐食を防ぐことを「防食」というのです。
最もポピュラーな防食は、塗装。
日曜大工で金属製のものを作る際も、さび止め塗料をぬったりすることがあるでしょう。
これも防食です。
しかし、水中にあるものや塗装ができないものもあります。
このようなものには、別の方法で防食しなくてはなりません。
その方法のひとつが、電気防食なのです。

2.電気防食の原理とは?

電気防食とは、水中など金属が腐食しやすい環境で防食をする方法です。
その原理は、腐食しやすい金属に電極から直接電流を流して、金属を腐食しない電位(防食電位)にまで変化させ防食します。
といっても、これだけでは理解できない方が多いでしょう。
前述したように、腐食とは電子がイオン化して金属面から脱落していくことです。
ですから、電位を上げたり下げたりして、電子がイオン化しないようにします。
たとえば、鉄の電位を上げると電子が「不動態」になるのです。
これを「陽極防食法」といいます。
逆に電位を下げれば、電子が「不活性」になるのです。
これを「陰極防食法」といいます。
電位を上げるか下げるかは、金属が置かれた環境にもよるのです。

3.電気防食のメリットとは?

電気防食のメリットは、塗料やメッキができないところの金属に防食ができるということです。
代表的なものは水中に建っている金属の建造物でしょう。
今は、海中に支柱を立てて島同士をつなぐ橋もたくさん作られています。
その支柱に防食の塗装やメッキをしても、水で落ちやすいでしょう。
ですから、電気防食を行えば腐食をより遅らせることができます。
また、最近では塗料やメッキによって防食ができないところにも用いられるのです。
一例をあげると、コンクリートの中の鉄芯。
コンクリートで建造物を作る場合、中に鉄心を入れます。
「酸素に触れなければさびないのではないか?」と思う方もいるでしょう。
しかし、コンクリートの中も完全に無酸素状態というわけではありません。
時間がたつにつれてひび割れなどができて、そこから空気や水が染みこんでいきます。
老朽化したコンクリート製建造物を取り壊すと、中の鉄芯が真っ赤にさびていることも珍しくありません。
当然、鉄がさびれば強度も落ちます。そこで、電気防食をすることにより鉄芯の腐食を防ぐのです。
コンクリートの中にぬりこめてしまえば、防さび塗料などもぬりなおしができません。
しかし、電流ならばずっと通し続けられるでしょう。

4.電気防食の種類とは?

では、電気防食にはどのような種類があるのでしょうか?
この項では、電気防食の種類についてご紹介します。

4-1.流電陽極方式

海や土の中にある腐食しやすい金属をアルミニウム、亜鉛、マグネシウムのようなイオン化傾向の大きい金属につなぎます。
両者の電位差を利用して腐食しやすい防食電流を流す方式です。
現在では、最も電気防食の主流になっています。
外部電源方式と違い、電気を供給する場所がなくても使えるので、幅広い場所で使われているのです。

4-2.外部電源方式

昭和40年ごろまで主流だった電気防食の方法です。
土中や水中に不溶性電極を置き、これに直流電源装置の(+)極をつなげます。
また同時に、腐食しやすい金属には(-)極を接続し、不溶性電極から電流を送って管の電位を防食電位まで下げて防食するのです。
つまりずっと電流を流しておく必要があります。
ですから、電気の影響を受けるものの近くでは使えません。
土中や水中深くに電極を置く必要があります。
また、電極自体が土や水の中で溶けてしまわないような処理も必要になるのです。
ですから、効果は高いですが、気軽にどこにでも使えるという方法ではありません。

4-3.選択排流法

これは主に、電気鉄道の線路に埋められている腐食しやすい金属に用いられる方法です。
電気鉄道は、電気で動きます。
その際 直流電鉄軌条からの漏洩電流(迷走電流)によって影響を受けている場所だけに選択排流器を設置し、電流を流す方法です。
常に土中に埋没している金属の上に電気を燃料にして走る電車が通っているからこそ、できる方法でしょう。
電気鉄道以外に使われることはほぼありません。

5.おわりに

いかがでしたか?
今回は、電気防食の原理や種類によってご紹介しました。
まとめると

  • 放っておけば腐食してしまう金属には防食が必要。
  • 塗装やメッキなどができない場所に設置してある金属には、電気防食が有効。
  • 電気防食と電子をイオン化しないように電気の力で電子を不働態にしたり不活性にしたりする方法。

ということです。
電気防食法自体は、昭和40年ごろから行われている古い技術。
しかし、そのやり方は年々進化しています。
特に外部電流方式は、電源がないところや電気の影響を受ける場所の近くでは使えませんでした。
それを、流電陽極方式の技術が確立されたことでどんな場所でも電気防食が可能になったのです。
現在、電気防食は海底ケーブルにも用いられています。
インターネットの開発により海底ケーブルは世界中にはりめぐらされるようになりました。
しかし、海底ケーブルの点検などはそう頻繁には行えません。
ですから、電気防食をすることによって腐食のリスクを低下させているのです。
電気防食をしていても金属の腐食を完璧に防ぐことはできませんが、塗料やメッキによる防食よりは長持ちするでしょう。
また、身近なところでは河口付近かかる橋などにも電気防食がされています。

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