危険物とは、不用意に保管しておくと火災や爆発の危険性が高い物質のことです。
しかし、ガソリンや灯油など私たちの生活になくてはならないものも少なくありません。
ですから、危険物を輸送する機会も多いのです。
そこで、今回は危険物を輸送する際の決まりについてご紹介します。
危険物を輸送する方法は、どのようなものがあるのでしょうか?
また、消防法で定められた決まりについてもご説明します。
これから危険物取扱者の資格試験を受験するという方は、ぜひこの記事を読んで参考にしてくださいね。
目次
- 危険物の輸送とは?
- 危険物を運搬する際の決まりとは?
- 危険物を移送する際の決まりとは?
- おわりに
1.危険物の輸送とは?
危険物の輸送には、「運搬」と「移送」の2種類があります。
運搬とは、トラックなど危険物以外のものも輸送できる車両で危険物を輸送することです。
移送とは、タンクローリーで危険物を輸送することを指します。
つまり、危険物はタンクローリー以外でも運べるのですね。
しかし、危険物は常温でも引火したり発火したりするものが多いので、消防法によって運搬方法や容器の素材が定められています。
2.危険物を運搬する際の決まりとは?
この項では、消防法で定められた危険物を運搬するときの決まりをご紹介します。
積載量や容器にも決まりがあるのです。
また、危険物を運搬する際は指定数量以下でも消防法が適応されます。
つまり、どんなに少量の危険物を運ぶときも消防法で定められた決まりを守らなければなりません。
2-1.危険物を入れる容器とは?
危険物は、鋼板(ごうばん)、アルミニウム、ガラスなど危険物と反応しない容器に入れる必要があります。
ガラス製の容器というと、何だか壊れやすいイメージがありますが、強化ガラスを使用すれば容器同士がぶつかった程度では壊れません。
また、容器は堅固で破砕する恐れのないものを使用します。
つまり、積みやすく輸送中に動かない形にしなくてはなりません。
ですから、一斗缶のような直方体の容器を使うことが多いでしょう。
また、容器の表面には、品名危険等級化学名水溶性数量注意事項を記載しなくてはなりません。
危険等級は3段階に分かれており、1が最も危険になります。
また、水溶性か否かは水溶性の第4類危険物だけに必要な記載です。
注意事項とは、火気厳禁や火気注意など特に気をつけるべきことになります。
このような記載は、万が一事故が起こって危険物が発火や爆発したときに消火方法の目安になるのです。
危険物の中には、第4類危険物のように水をかけるとかえって燃え広がってしまうようなものも少なくありません。
ですから、消防士は危険物が燃えたときは記載内容を見て消火方法を決めるのです。
2-2.危険物の積載方法とは?
危険物は、必ず運搬容器に収納して積載します。
たとえ少量でも、運搬容器以外のものに入れてはいけません。
また、個体の危険物は内容積の95%以下、液体の危険物は内容積の98%以下と収納率も決められています。
これは、気温によって容積が膨張する危険があるからです。
また、液体の場合は外気温が55度になっても液がもれないように空間容積をとらなければなりません。
さらに、積みこむときは容器の口を上にして積みこみ、高さは3m以下にします。
ですから、大型トラックでも危険物を積みこめる量には限りがあるのですね。
また、自然発火物などは直射日光に当たらないように必ずほろをかぶせたり、コンテナに入れたりします。
さらに、禁水性の危険物も雨に当たると危険ですので、雨が当たらないような運搬方法で運ばなくてはなりません。
そして、第5類危険物中、55度以下で分解するものは、保冷コンテナ等で温度管理をしながら運びましょう。
外気温自体が55度になることはほぼありませんが、真夏のコンテナ内は55度など軽く突破してしまいます。
2-3.混載禁止について
危険物は第1類~第6類に分類されています。
危険物を運搬する際は、基本的に異なる類の危険物は混載しないようにしましょう。
混載が許可されているのは、指定数量の10分の1以下の危険物と、類の合計が足して7になる組み合わせの危険物です。
ですから、第1類と第6類、第2類と第5類は混載ができますね。
また、4類だけは足して6と9になる組み合わせも混載ができるのです。
つまり、第4類と第2類、第5類、第3類は混載が可能。
危険物取扱者の試験に出ることもありますので、覚えておきましょう。
2-4.運搬するときの注意点について
危険物を運搬する際は、危険物取扱者の資格保持者でなくてもかまいません。
ただし、指定数量以上の危険物を運搬する際は黒字に黄色で「危」と書いた標識を車にはり、消火設備を備える必要があります。
運転する際は、安全運転を心がけて容器に激しい衝撃や摩擦が起きないようにしてください。
つまり、未舗装の道路や急カーブが続く山道などはできるだけ通らない方がよいでしょう。
また、万が一事故を起こした場合は応急処置をとりつつ、最寄りの消防機関に連絡してください。
その際、積載している危険物の種類と消化方法を必ず伝えましょう。
もちろん、危険物取扱者の資格を持っている人が運搬するに越したことはありません。
3.危険物を移送する際の決まりとは?
この項では、危険物を移送する際の決まりをご紹介します。
運搬とどのような違いがあるのでしょうか?
3-1.搭乗者の決まり
危険物を移送する際は、必ず危険物取扱者の資格保持者を乗車させなくてはなりません。
乗車をする際は、危険物取扱者の免状を携帯します。
コピーは不可ですから注意しましょう。
また、連続運転時間が4時間を超える場合と1日当たり9時間を超える移送は、ひとりではおこなえません。
必ずふたり以上でおこないます。
なお、事前にタンクや消火器の点検を行い
- 完成検査済証
- 定期点検記録
- 譲渡・引渡届出書
- 品名等変更届出書
を備え付けてあるか確認しましょう。
これらは、必ず原本でなくてはなりません。コピーは不可です。
3-2.そのほかの注意点
アルキルアルミニウム等、空気に触れると発火するような危険度が極めて高い危険物を輸送する場合は、移送経路等を書面にして消防機関に送付しなければなりません。
これをおこたって事故を起こした場合、罪になることもありますので注意しましょう。
タンクローリーは別名移動タンク貯蔵所ともいいます。
危険物を運搬するだけではなく貯蔵する役割もはたせますので、運搬よりもよりルールが厳しくなっているのです。
4.おわりに
いかがでしたか?
今回は消防法で定められた危険物の輸送方法についてご説明しました。
まとめると
- 危険物の輸送は運搬と移送がある。
- 運搬は普通の車両を使い、移送にはタンクローリーを使う。
- 運搬をする際は、指定数量以下でも消防法の規定を守らなくてはならない。
- 移送する場合は危険物取扱者の資格保持者が乗車しなければならない。
ということです。
危険物は一般車両でも運搬できるのですが、守らなければならない決まりがたくさんありますね。
しかし、これを守っていれば火災が発生する確率がぐっと低くなるでしょう。
ガソリンや灯油などは私たちの身近にあるために、ときには「危険なものである」という認識が薄れてしまうかもしれません。
しかし、いったんタンクローリーが火災を起こすと大事故につながります。
危険物を運搬する際も、可能な限り危険物取扱者に監督や輸送をお願いしましょう。