危険物第5類に指定されているニトログリセリンの性質や特徴とは?

ニトログリセリンは映画や小説などにも登場する知名度の高い危険物です。
また、ダイナマイトの原料であると同時に狭心症の薬にもなる珍しいものでもあります。
今回は、このニトログリセリンの特徴や性質をご紹介しましょう。
ニトログリセリンは危険物第5類に分類されていますが、どのような保管方法や消火方法があるのかもご紹介します。
また、ニトログリセリンのほかにニトロ化合物というものも同じ第5類に分類されていますが、このふたつの違いについてもご紹介しましょう。
危険物取扱者の資格取得を目指している方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。

目次

  1. ニトログリセリンとは?
  2. ニトログリセリンの性質や特徴とは?
  3. 製品化されたグリセリンを取り扱う際の注意点
  4. 危険物第5類の特徴とは?
  5. おわりに

1.ニトログリセリンとは?

ニトログリセリンは、危険物第4類に指定されているグリセリンを硝酸でエステル化させたものです。
ダイナマイトの原料や狭心症の薬として広く知られています。
現在、火薬として扱われている「ピクリン酸」や「トリニトロトルエン」の両方を指すニトロ化合物とは別種ですので、覚える際には混合しないように気をつけましょう。
なお、医薬品として処方されるニトログリセリンは爆発しないように処理されていますから、大量に集めても危険はありませんし、衝撃などを与えても爆発することはありません。
ですから、医薬品としてのニトログリセリンは危険物ではないのです。
しかし、硝酸エステル類に分類されるニトログリセリンは、衝撃を与えると爆発する危険物の中でも群を抜いて取り扱いが難しいもの。
そのため、日本ではニトログリセリンをそのまま出荷することはありません。

2.ニトログリセリンの性質や特徴とは?

では、ニトログリセリンにはどのような性質や特徴があるのでしょうか?
この項では、その一例をご紹介します。

2-1.ニトログリセリンの特徴や性質とは?

ニトログリセリンはダイナマイトの原料として広く知られていますので、固体のイメージがある方もいるでしょう。
しかし、ニトログリセリンは無色透明の液体で、よい香りがします。
これは硝酸エステル類の特徴でもあり、硝酸エチルや小酸メチルも同じようによい香りがして、しかも甘みがあるのです。
ニトログリセリンは液体にも毒性があるため、誤飲をすれば命にかかわるでしょう。
また、水にはほとんど解けず有機溶剤に溶けます。
さらに、水より高い8度で凍結しますが、凍ったニトログリセリンは液体のときより爆発力がアップするのです。
そのうえ、前述したように衝撃を与えたり高温の物質の上に液体のニトログリセリンを落としたりすると、爆発します。
なお、綿などに染みこませて着火すると爆発はせずに激しく燃え上がりますが、これも金づちなどでたたくと爆発してしまうのです。
つまり、ニトログリセリンそのものだけでなく、それを染みこませた物質も危険になります。
万が一ニトログリセリンをこぼしたりした場合は、水酸化ナトリウムのアルコール溶液をその上からそそいでから拭き取るのです。
水酸化ナトリウムのアルコール溶液は、ニトログリセリンを非爆発性にする性質があります。

2-2.ニトログリセリンの保管方法や消火方法とは?

このように、ニトログリセリンは取り扱いが難しく危険性の高い物質です。
ですから、加熱や衝撃、摩擦をさけて保管します。
しかし、原液は容器をあやまって落としたりした程度の衝撃で爆発してしまうため、今ではアセトンや水とまぜて感度を下げるか、添加物を加えて膠(にかわ)のようにして保管するのが一般的です。
さらに、ニトログリセリンは火がついたら消火困難。
燃焼というより爆発してしまうので、逃げるしかありません。
危険物取扱者の参考書にも「消火困難である」と書かれているはずです。
ニトログリセリンは19世紀に発見されてから、盛んに製造されてきました。
しかし、より安全な保管方法が確立されるまで、ひんぱんに爆発事故が発生していたのです。
現在でも、ニトログリセリンを製造する工場での事故は、世界中で起こっています。

3.製品化されたグリセリンを取り扱う際の注意点

危険物としてのニトログリセリンを扱いやすいように製品化したものといえば、皆様もよくご存じのダイナマイトです。
ニトログリセリンとニトロセロエースを混ぜ合わせて膠(にかわ)化したものに化学薬品を混ぜ合わせたもので、粉状のものからおなじみの筒状のものまでいろいろな形があります。
ニトログリセリンの原液よりも安全性は高まっていますが、それでも衝撃や火気をさけて保管しなければなりません。
さらに、気をつけなければならないのは、凍結です。
前述したようにニトログリセリンは水よりも高い温度で凍ります。
ですから、北国でなくても外に保管しておけば、ニトログリセリンが凍結する場合もあるでしょう。
凍結と解凍をくりかえしたニトログリセリンは、たとえ膠(にかわ)化された状態であっても、しみだしてくる場合があるのです。
ですから、ダイナマイトを管理するときは温度にも気を配らなくてはなりません。

4.危険物第5類の特徴とは?

危険物は、消防法によって第1類~第6類まで分類されています。
危険物取扱者の資格は、甲、乙、丙の3種類に分かれており最も受験者が多いのが危険物乙種4類、通称乙4です。
第4類に指定されているのは「引火性液体」ですが、危険物第5類に指定されているのは、「自己反応性物質」という物質になります。
自己反応性物質というのは、分子中に酸素を有し自己燃焼しやすいという特徴があるのです。
私たちにとって最も身近にある危険物である、灯油やガソリンと比べてみましょう。
灯油やガソリンは火をつけると激しく燃え上がりますが、それ自体は高温にするなど一定の条件を満たさなければ自然に発火することはありません。
しかし、自己反応性物質は分子の中に燃焼の三要素である可燃物と酸素供給減が共存しているものが多いのです。
ですから、後は点下源さえあれば爆発したり燃焼したりします。
そのため、ガソリンや灯油よりより保管方法を厳重にしなければなりません。
危険物取扱者の役割も重要になってきます。
ちなみに、ダイナマイト以外の火薬であるニトロ化合物もこの危険物第5類に分類されているのです。
以前は炭鉱の開発などで需要があった火薬類も、現在はあまり使われなくなってきています。
それでも危険物乙種第5類を取得しておけば、それらを保管や製造する企業から一定の需要が求められるでしょう。

5.おわりに

いかがでしたか?
今回は危険物第5類に指定されているニトログリセリンの性質や特徴について、ご紹介しました。
まとめると

  • ニトログリセリンはダイナマイトの原料になる非常に危険度の高い物質である。
  • ニトログリセリンは甘味と芳香のある液体で、強い毒性を持つ。
  • 衝撃で爆発するのでニトログリセリンを原液の状態で出荷することはない。
  • ニトログリセリンは水よりも高い温度で凍結するため、温度管理も大切。
  • 医療品としてのニトログリセリンに危険性はない。

ということです。
ニトログリセリンの威力は、たくさんの動画サイトで公開されています。
参考までに見ておいてもよいでしょう。
通常の生活をしていれば、ニトログリセリンと接する機会はほとんどありません。
しかし、建築関係の仕事に就いていたり、研究所などに勤務していたりすると接する機会もあるでしょう。

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