メタノールは第4類危険物に指定される、私たちにとってもなじみ深い危険物です。学校の理科の実験で、アルコールランプを使ったという方も多いでしょう。しかし、なじみ深いからこそ、メタノールによる事故も昔から多いのです。
そこで今回は、メタノールの特徴や性質をご紹介します。危険物取扱者の資格を取得している人はもちろんのこと、少量のメタノールを扱う機会がある方が多いです。ぜひこの記事を読んで正しい取り扱い方を知ってください。
- メタノールの性質は?
- メタノールの特徴は?
- メタノールを保管する際の注意点は?
- メタノールを含んだ製品の取り扱う際の注意点
1.メタノールの性質は?
メタノールとは、有機溶媒などに用いられるアルコールの一種。お酒など食用に使われるアルコールはエタノールといい、よく似た名前ですがメタノールは有毒です。別名をメチルアルコールといい、ホルマリンの材料やアルコールランプの燃料として古くから使われてきました。
また、近年では燃料電池の水素供給源として注目されています。第4類危険物に指定されていますが、事故が多い物質としても有名です。日本でも、昔は安価な酒類に混入されていたことが多く、中毒者がたくさん出ていました。今でも、開発途上国では安価な酒類にメタノールが混入されていることが多く、問題になっています。
2.メタノールの特徴は?
では、メタノールにはどのような特徴があるのでしょうか? この項でご紹介します。特徴を知っていれば、保管方法や万が一発火した場合の消火の方法なども分かるでしょう。
2-1.引火点や沸点が低い
メタノールは引火点や沸点がアルコール類の中で最も低いです。引火点は11度、沸点は65度になります。つまり、常温で保管をしていても火気を近づければすぐに燃えるでしょう。同じアルコールの中でもエタノールの引火点も16.6度とかなり低いですが、それをさらに下回っているのです。
また、炎が青色で見えにくいという特徴もあります。ですから、発火をしていても遠目からでは気がつかないこともあるのです。また、沸点が低いということは、蒸発しやすいということ。
蒸発したメタノールに火気を近づければ、当然発火します。ですから、密閉した容器に入れておかないとガソリンと同じようにどんどんと蒸発するでしょう。
2-2.水に溶けやすく、独特の臭気があり有害である
メタノールは水に非常によく溶けます。これは、エタノールと同じですね。また、独特の臭気があります。アルコールの臭い、といえばイメージできる方も多いでしょう。このような特徴は、エタノールと共通しています。ただし、メタノールは人体にとって有害です。
特に、視神経に強く症状が出るため、メタノールを摂取すれば失明の危険が高く、一度に大量に摂取すれば命の危険もあるでしょう。しかし、メタノールはエタノールに比べて手に入りやすく、非常に安価です。
摂取すると酩酊(めいてい)状態になるという特徴も、エタノールと同じ。ですから、メタノールを混入した飲料が「酒」として出回ることもあります。現在の日本ではそのようなことはまずありませんが、外国では毎年のように中毒事故が発生しているのです。開発途上国に旅行する際は、安価な酒を口にしないように注意してください。
2-3.窒息消火を行う
メタノールは水より比重が軽いのです。ですから、万が一発火したときに水をかけると、水に浮いて余計に燃え広がることもあります。発火した場合は二酸化炭素や粉末、耐アルコール泡による窒息消火を行いましょう。
アルコールランプを学生に扱わせる場合は、火災の危険を十分に知らせてから行ってください。万が一、アルコールランプを倒してしまった場合は、雑巾などをかぶせて窒息消火を行いましょう。
3.メタノールを保管する際の注意点は?
メタノールを保管する場合は、密閉できる容器に入れて火気厳禁で保管します。前述したようにメタノールは、蒸発しやすく空気よりも軽いのです。さらに、引火点も低く火気を近づけただけで火がつくでしょう。そのうえ、メタノールが蒸発した蒸気を吸い込んでも人体に有害です。有機溶剤を密閉した場所で使い続けると、頭が重くなったりめまいがしてきたりすることもあるでしょう。
それは、メタノールの毒性のためでもあるのです。ですから、メタノールを利用する場合は、通気性にも気をつけてください。また、火気がなく安全だからといって、通気性の悪いところに置いておいてはいけません。
4.メタノールを含んだ製品の取り扱う際の注意点
メタノールを含んだ製品は、私たちの身の回りにたくさんあります。一例をあげるとキャンプ用の着火剤です。この項では、メタノールを含んだ製品を取り扱う際の注意点をご紹介しましょう。
4-1.メタノールを含んだ製品を直接火にかけない
メタノールは引火点や沸点が低いため、直接熱するとすぐに気化してしまいます。ですから、メタノールを含んだ製品を直接火にかけると、発火したり爆発したりする危険があるのです。ですから、メタノールを含んだ製品を火に近づけたり直接熱したりしないように気をつけましょう。
4-2.着火剤を継ぎ足さない
バーベキューなどで炭火を使う際、着火剤を使用する方も多いでしょう。この着火剤にはメチルアルコールが含まれています。炭は、優れた燃料ですが、慣れない人がおこそうとしてもなかなか火がつきません。ですから着火剤を使うのですが、燃やし方が悪いと着火剤だけが早々に燃えてしまい、なかなか炭火には火がつかないこともあります。
そのため、着火剤を燃えている火に継ぎ足すこともあるでしょう。しかし、これは大変危険な行為です。着火剤はマヨネーズやケチャップのように、弾力があるプラスチックの容器に入っていることが多いでしょう。
このような容器は、着火剤を出すと形が戻るようになっています。しかし、形を戻すときに一緒に空気も吸い込むのです。燃えている炎の上に改めて着火剤をかけると、炎に熱せられた空気が着火剤の容器の中に入ります。
その結果、一気に着火剤が点火して爆発することもあるのです。このような事故が多発してから、着火剤の容器の形を変えたメーカーもあります。しかし、いまだに弾力性がある容器に入れられて売られているものも多いのです。ですから、着火剤は絶対に継ぎ足さないようにしましょう。
おわりに
今回はメタノールの性質や特徴についてご紹介しました。メタノールは私たちの身の回りにたくさんあるので、つい危険物だということを忘れがちになります。特に、学校で使う場合は保管方法に注意しましょう。今は、アルコールランプを使う実験も減っていると思いますが、メタノールの補給などを生徒にやらせる場合は、教師が必ず監督をしてください。
また、メタノールの炎は昼間では見えにくいです。ですから、燃えているかどうか判別がつきにくいこともあるでしょう。そのため、メタノールを保管してある場所は、できるだけ暗くしておいてください。
メタノールを原料とするアルコールランプは、かつてサイフォン式のコーヒーメーカーに使われていました。今でも、愛好者は多いでしょう。ドリップ式に比べると味が深いコーヒーを入れられるそうですが、取り扱いには十分注意してください。万が一、布製品の上にこぼした場合は、すぐに洗濯をしましょう。