危険物というと、化学物質をイメージする方は多いでしょう。
しかし、今回ご紹介する金属粉も立派な危険物なのです。
金属粉とは、文どおり金属の粉末のこと。
細かくなったことにより、かたまりのときとはまた違った危険性が発生するのです。
では、どのような危険性があるのでしょうか?
この記事で、金属粉の特徴とともにご紹介します。
また、金属粉の扱い方や消火方法、さらに保管方法なども一緒にご説明しましょう。
危険物取扱者の資格取得を目指す方は、ぜひこの記事を読んでみてください。
- 金属粉とは?
- 金属粉の危険性とは?
- 金属粉の取り扱いの注意点とは?
- 冬は静電気に要注意
- もし、金属粉が発火したら?
- おわりに
1.金属粉とは?
金属粉とは、文字どおり金属の粉のことです。
金属というと大きなかたまり、というイメージが強い方も多いでしょう。
しかし、削ったり砕いたりする過程で大量の金属粉が発生することは珍しくありません。
また、最初から粉末の状態で取れる金属もあります。
皆様もおなじみの砂鉄です。
これは、砂状の鉄粉で、これを熱することで鉄のかたまりを生成します。
さて、金属粉はかたまりよりも空気に触れる面積が大きいので、燃えやすいという特徴があるのです。
そのため、消防法によって「150マイクロメートルの網ふるいを通過するもので、物質中に50%以上の金属の粉含まれているもの」が、危険物第2類に定められています。
ただし、すべての金属粉が危険物に該当するわけではありません。
アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、マグネシウム、銅粉、ニッケル粉は除外されます。
ただしこれは、ほかの類の危険物に定められているからで、決して危険性がないというわけではありません。
2.金属粉の危険性とは?
金属粉の中には、化学物質と反応して可燃性のガスを発生させるものもあります。
一例をあげると、アルミニウムと亜鉛の粉末です。
両方とも酸にもアルカリにも反応して可燃性がある水素ガスが発生します。
アルミニウム粉も亜鉛粉も塗料に用いられたり、工業製品を作ったりと幅広く使われているのです。
ですから、不用意に保管しておくと爆発や火災の危険性があるでしょう。
可燃性のガスが発生するほかに、粉末ならではの危険性に粉塵爆発があります。
粉塵(ふんじん)爆発とは、細かい粉末が空気との摩擦によって連鎖的に爆発すること。
金属粉や石炭の粉末など可燃性のものだけでなく、小麦粉や砂糖といった食品でも粉塵(ふんじん)爆発が起こる可能性があるのです。
さらに、金属粉を長い間吸い込み続けると、健康被害を引き起こす可能性も高いでしょう。
そのため、危険物に指定されていない金属粉でも扱い方に注意が必要です。
3.金属粉の取り扱いの注意点とは?
では、金属粉の取り扱いにはどのような注意が必要なのでしょうか?
この項でも、取り扱っていることの多いアルミニウムと亜鉛の粉末を例にとってご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
3-1.アルミニウム粉末の取り扱い方とは?
アルミニウム粉末は、塗料などに混ぜて使われることの多い粉末です。
銀白色の粉末で、酸にもアルカリにも溶けるという両性金属になります。
溶けたアルミニウム粉末からは、水素が発生するのです。
水素は可燃性気体ですから、可燃性の物質を近づけると発火する可能性があります。
さらに、熱水をくわえても水素ガスが発生するのです。
そして、空気中の水分、さらにハロゲン元素により自然発火する可能性もあります。
つまり、湿度の高い場所にアルミニウム粉末を放置しておくと、発火することもあるのです。
このような物質ですから、万が一発火した場合は冷水消火を試みてはいけません。
冷水をかけるとそれが火の熱で熱水になり、水素ガスが発生します。
そのため必ず砂などで窒息消火を行いましょう。
3-2.亜鉛粉末の取り扱い方とは?
亜鉛粉末とアルミニウム粉末と同じように、酸にもアルカリにも溶けて水素ガスを発生します。
ですから、アルミニウム粉末と同じように水やハロゲン元素をさけて、窒息消火を行ってください。
亜鉛粉末はアルミニウム粉末よりも使われている場所が多いです。
ですから、取り扱う方もたくさんいるでしょう。
水は、水道水だけとは限りません。
人間の体液も水分です。
取り扱う際は、汗などにも十分注意してください。
3-3.粉塵(ふんじん)爆発の恐ろしさ
金属粉で一番恐ろしいのは、粉塵(ふんじん)爆発です。
粉塵(ふんじん)爆発とは、微細な粉末が空気中に舞い散ると、そこに火種があった場合一気に爆発する現象のことを指します。
前述したように、金属粉は粉末になると空気に接する面が増えるのです。
そのため、より爆発しやすくなります。
ちなみに金属粉の中で最も粉塵(ふんじん)爆発をしやすいのが、マグネシウムの粉(鉄粉)です。
そのため、鉄粉は危険物第3類に指定されています。
ですから、金属粉は空気に触れないように密封して保管するのはもちろんのこと、一度に大量の金属粉が出ないような構造にしなければなりません。
4.冬は静電気に要注意
粉塵(ふんじん)爆発は、火元がないと発生しません。
「うちの職場は、火元などないから大丈夫」と思う方もいるでしょう。
しかし、火元が全くない場所でも人がいるだけで発火の危険性はあります。
その理由は、静電気。
人体は必ず静電気を帯びています。
特に、空気が乾燥する冬は、指先から火花が散るほど静電気が発生することもあるでしょう。
この火花が火元になり、粉塵(ふんじん)爆発が起きる可能性もあります。
ですから、冬に金属粉を扱う場合は、必ず静電気を逃がす処置を取ってから金属粉を触りましょう。
まさか、と思うことで発火することもあります。
5.もし、金属粉が発火したら?
金属粉が発火してしまったら、前述したように水をかけてはいけません。
ますます燃え広がる危険性があります。
金属粉が発火してしまった場合は、砂による窒息消火を試みてください。
また、消防に連絡する場合は必ず危険物取扱者の資格保持者が、行いましょう。
その際、必ず金属粉があることと、その種類を伝えてください。
そうすれば、消防はそれに合わせた消火の準備を整えてきてくれます。
また、金属粉が火災の熱で舞い上がって粉塵爆発の可能性があるという場合は、付近の住民を避難させましょう。
粉塵(ふんじん)爆発の規模は、意外なほど大きいのです。
ですから、できるだけ遠くまで避難することが大切になります。
6.おわりに
いかがでしたか?
今回は危険物としての金属粉の特徴と危険性をご紹介しました。
金属粉は、金属を加工している最中にもゴミとして発生します。
製品の原材料として金属粉を使う場合は、取り扱いに注意していることも多いでしょう。
しかし、ゴミとして発生した金属粉は、取り扱いが不十分になりがちです。
特に、粉塵(ふんじん)爆発が起こると、取り扱っていた場所だけでなく、近隣にも迷惑がかかります。
また、ゴミとして金属粉を集めておいた場合も、湿度の高い場所に置いておくと自然発火する恐れがあるでしょう。
ですから、金属粉を扱っているすべての業者は、ゴミを含めて取り扱いに注意しなくてはなりません。
さらに、服についた金属粉も要注意です。金属粉は軽いですから、あっという間に服が粉まみれになってしまうことも珍しくはないでしょう。
そこに、火元を近づければあっという間に燃え上がってしまうこともあります。
取り扱う際は、服にもつかないように気をつけてください。