こちらでは、危険物取扱者の資格取得を目指している方に向けて、第1石油類に属するベンゼンの性質を解説しています。予備知識がなくても理解できるように記述しましたので、まだ本格的な勉強をはじめていない方でも問題なく読み進めることができるはずです。
ベンゼンは引火性液体に分類されており、甲種危険物取扱者・乙種4類危険物取扱者の資格試験に出題される可能性があります。乙種4類危険物取扱者は通称:乙4と呼ばれており、ガソリンスタンドの業務で役立つことから非常に人気の高い資格です。
- ベンゼンの仲間、第1石油類の性質とは?
- ベンゼンってどんな液体なの?
1.ベンゼンの仲間、第1石油類の性質とは?
第1石油類というのは、21℃未満の気温で引火する液体のことです。常温でも火がつけば燃え上がる液体…と捉えてください。
特に熱を加えない状態で液体の一部が気体になる現象を揮発と呼びます。引火性液体が揮発する温度のことを引火点と言い、この引火点が21℃未満の引火性液体(要するに燃える液体)が第1石油類…と言い換えることも可能です。引火点より低い温度だと、そんな危険な液体でも火はつきません。揮発していることが、燃えるための条件なのです。
よく似た言葉に沸点というのがありますが、これは熱を加えて液体のすべてが気体に変わる温度を指します。水が水蒸気に変わる温度は100℃なので、水の沸点は100℃。これは小中学校で習ったことがありますね?これは引火点とは違い、全体が気体に変わる温度です。揮発する液体は、“沸点より低い温度で一部が気体に変わる”という点で特徴的といえます。
揮発、引火点、沸点といった言葉の意味を知っていると、石油類の性質が理解しやすくなるはずです!
1−1.第1石油類にはどんな液体があるの?
ベンゼンの性質を解説する前に、まずは第1石油類の仲間をまとめておきたいと思います。
もっとも有名なのはガソリンですから、ガソリンについて詳しく説明してみましょう。自動車ガソリンであれば、引火点は−40℃なので、冬の北海道でも問題なく燃料として使えます。ちなみに、−40℃より低い温度だと揮発しないので、そこまで気温が低い場所だと自動車は走ることができません。
自動車ガソリンを見たことがあれば知っていると思いますが、見た目にはオレンジ色をしています。しかし、これは灯油(無色)・軽油(淡黄色or淡褐色)と区別するために色がつけてあるだけで、本当は無色透明です。
火災を予防するには、まず静電気に注意することが大切。静電気の火花でも引火する可能性があるからです。また、揮発した蒸気が一ヶ所に溜まらないように換気を心がける必要があります。
万一、火がついた場合、水をかけても消えません。油による火災と同じで、水の上に浮き上がってしまうので、燃えているガソリンの温度が下がらないのです。ガソリンのように、水に溶けない(水と混じらない)引火性液体は基本的に水による消火(冷却消火)はできません。
消火するためには、泡・粉末・二酸化炭素を浴びせて、燃焼に必要な酸素が行き渡らないようにしてください。この消火方法を窒息消火と呼びます。
これがガソリンの性質です。これらを専門用語で言い表すと、次のようになります。
- 引火点−40℃(−40℃より高い温度で引火する)
- 液比重が1未満(水の比重が1なので、水より軽い)
- 非水溶性である(水に溶けない、混じらない)
- 色は透明だが、オレンジ色に着色されている
- 消火する場合は窒息消火
危険物取扱者の資格を目指すためには、すべての第1石油類に関して、こういった性質を覚える必要があるのです。ガソリン以外の第1石油類には、ベンゼンのほかにトルエン・メチルエチルケトン・酢酸エチル・アセトン・ピリジンが存在します。
2.ベンゼンってどんな液体なの?
それでは、本題である“ベンゼンの性質”をまとめましょう。誰もが良く知っているガソリンで確認したように、引火点、色、消火方法といった特徴を覚えれば良いのです。
ちなみに、名前が似た物質にベンジンがあります。これは似ているだけで別の物質なので、混同しないように注意してください。
2−1.ベンゼンの性質を解説!
ベンゼンが揮発する温度は−10℃以上です。要するに、引火点は−10℃であり、気温が特に低い場所だとガソリンより燃えにくいことになります。
液比重は水より軽く、非水溶性です。ガソリンと同じように、火がついたら水で冷却消火することはできません。泡・粉末・二酸化炭素などで窒息消火する必要があります。ちなみに、冬の寒い日には固まる(固化)ことがありますが、固化した状態でも引火することがあるので要注意。
火災を予防する方法はガソリンと同様です。静電気に注意すること、そして揮発した蒸気が一ヶ所に溜まらないよう換気を心がけてください。
ベンゼンは有毒な蒸気を発生するので、吸いこむと中毒症状が出ます。昔は金属からグリースを除去したり、ペンキをはがしたりする有機溶剤として使われていました。しかし、毒性が強く、発がんの危険性を持っていることが分かったので、今では使われていません。ペンキはがし、染み抜きといった家庭向けの用途には、同じ第1石油類で毒性の低いトルエンが使われています。
- 引火点−10℃
- 液比重が1未満
- 非水溶性である
- 色は無色透明
- 消火する場合は窒息消火
ベンゼンの性質をまとめると、以上のようになります。意味を理解していれば、覚えるのはそれほど難しくありません。
2−2.ベンゼン化合物にはどんなものがある?
ベンゼンの化合物(化学変化を起こした物質)はさまざまな用途に用いられています。濃硝酸・濃硫酸と化合してニトロ化するとニトロベンゼンになり、これは殺虫剤・農薬・ゴムの原料として有名です。また、ニトロベンゼンは鎮痛薬:アセトアミノフェン(商品名:セデスあんど)の原料にもなります。
そのほか、二塩化という化学変化を起こすとパラジクロロベンゼンになり、これは防虫剤・トイレの消臭剤に使われることで有名。さらに酸化させると工業原料の無水マレイン酸になることが知られています。
まとめ
以上、甲種危険物取扱者・乙種4類危険物取扱者の資格試験に出るベンゼンの性質をご紹介しました。
- ベンゼンの仲間−第1石油類の性質とは?
- ベンゼンってどんな液体なの?
これら第1石油類は危険性が高い反面、さまざまな形で私たちの生活に役立っている重要な物質です。ぜひ、危険物取扱者の資格を手に入れて、これら危険物を有効活用できる人材になってくださいね!