危険物の取り扱いや保管をするためには、「危険物取扱者」という資格を取得しておかなければなりません。誤った方法で保管・取り扱いをしてしまうと、火災や爆発の恐れがあります。また、危険物取扱者は、取り扱う危険物の分類によって、資格の種類も異なるものです。そのため、自分が取り扱う危険物の分類をきちんと把握して、適切な資格を取得しておかなければなりません。
そこで本記事では、危険物の基礎知識や分類について、どのような特徴があるのか、詳しく説明します。
- 危険物の基礎知識
- 危険物の分類について
- 危険物1類~9類について
- 危険物取扱者の試験概要と勉強法について
- 危険物に関してよくある質問
この記事を読むことで、危険物取扱者の資格取得に必要な危険物の分類について知ることができます。試験を考えている方はぜひ参考にしてください。
1.危険物の基礎知識
分類について知る前に、危険物の基礎知識を身につけることが大切です。消防法における危険物や目的・消防法以外の危険物の分類について詳しく説明します。
1-1.消防法における定義
危険物は消防法によって定められています。危険物には、可燃物と支燃物があり、どちらも火災に影響を与えるものです。可燃物はガソリンや軽油など燃えやすい物質、支燃物は硝酸など、燃焼を促進させる物質を指しています。また、危険物は保管をするうえで必要不可欠な概念「指定数量」があり、「危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量」となっているものです。指定数量は消防法第9条に記載されています。
1-2.消防法の目的
消防法の第1条に目的が記載されています。大まかにわけると、3つの目的を有している法律です。まず1つ目は、火災の予防・警戒・鎮圧により国民の生命・身体・財産を保護すること、2つ目は災害による被害を軽減することとなっています。そして、最後の3つ目は、災害などによる傷病者の搬送を適切に行うことです。以上の目的を果たすことで、安寧秩序を維持し、社会公共の福祉の増進に役立つとされています。
1-3.消防法以外の危険物の分類について
危険物を航空・海上で輸送する場合は、国連危険物輸送勧告によって定められます。国連危険物輸送勧告は、輸送中の危険な状況が想定されており、航空・海上の輸送基準などが記載されているものです。消防法における危険物の概念と、国連危険物輸送勧告における危険物は異なります。そのため、航空や海上で運ぶ際は、国連危険物輸送勧告に基づいて輸送しなければなりません。国連危険物輸送勧告の危険物の分類に関しては、【3.危険物1類~9類について】で説明します。
2.危険物の分類について
それでは、危険物にはどのような分類があるのか、詳しく見ていきましょう。きちんと事前に把握しておけば、取り扱いたい危険物の資格が取得できます。資格取得を考えている方はぜひチェックしてください。
2-1.分類の必要性
私たちが普通に生活をしている中にも、身のまわりには危険物が潜んでいるものです。何もわからないまま扱うのは非常に危険といえます。また、危険物の取り扱いや保管を行う場所では、きちんと種類を分別しておかなければなりません。危険物の種類によっては、火の気のある場所で使用すると爆発・火災の恐れがあるからです。わずかなミスでも大事故につながる可能性があるからこそ、きちんと特徴によって種類をわけておかなければなりません。危険物の分類は、安全・安心を維持するために必要なことです。
2-2.危険物の分類詳細
危険物の分類基準や可燃物について詳しく説明します。
2-2-1.分類の基準は?
危険物の分類の基準は、いくつかの判定試験によって定められます。化学物質等安全データシート(MSDS)を使用して、危険性因子の有無の確認が最初にやるべきことです。そして、危険物因子を確認した後は、固体と液体にわけられます。さらに、固体の場合は酸化性固体・可燃性固体、液体の場合は引火性液体・酸化性液体に分類されるのです。
また、それぞれが自然発火性物質および禁水性物質(自然発火しやすく、水に触れると発火・ガスを発生させるもの)に当てはまる場合は第3類、自己反応性物質に当てはまる場合は第5類に分類されます。
以上のように、何度も判定試験を行うことで危険物の分類が可能です。
2-2-2.指定可燃物とは?
指定可燃物は、準危険物・特殊可燃物の一部を指しています。たとえば、綿花類・紙くず・石炭・木炭類などです。危険物と違い、単体では危険はほとんどありません。しかし、火災が発生した場合は拡大が速く、消火活動が難しくなる恐れがあります。そのため、大量の指定可燃物を所有する場合は、消防署への届け出や消火設備の設置が必要です。
2-3.分類一覧
日本の消防法で定められている危険物の分類は、第1類~第6類にわけられます。それぞれの特徴や具体的な種類について以下にまとめてみました。
<第1類:酸化性固体>
- 特徴:可燃物を酸化して、激しい燃焼・爆発を起こす固体
- 種類:塩素酸塩類・過塩素酸塩類・無機過酸化物・亜塩素酸塩類など
<第2類:可燃性固体>
- 特徴:着火しやすい固体・低温で引火しやすい固体
- 種類:硫化リン・硫黄・鉄粉・マグネシウムなど
<第3類:自然発火性および禁水性物質>
- 特徴:空気・水と接触して、発火したり、可燃性ガスを出したりする物質
- 種類:カリウム・ナトリウム・黄リン・アルキルリチウムなど
<第4類:引火性液体>
- 特徴:引火しやすい液体
- 種類:特殊引火物(ペンタン・ジエチルエーテルなど)・第1石油類(ガソリン・アセトンなど)・アルコール類・動植物油類など
<第5類:自己反応性物質>
- 特徴:加熱・衝撃で激しい燃焼・爆発する物質
- 種類:有機過酸化物・ニトロ化合物・アゾ化合物・ヒドラジンの誘導体など
<第6類:酸化性液体>
- 特徴:ほかの可燃物と反応して、その燃焼を促進する液体
- 種類:過塩素酸・硝酸・過酸化水素など
3.危険物1類~9類について
航空・海上で危険物を輸送する場合は、国連危険物輸送勧告に定めるものとなります。国連危険物輸送勧告や分類の詳細・GHSによる危険物について詳しく見ていきましょう。
3-1.概要
国連危険物輸送勧告は、国際的な危険物の輸送における安全を確保するための勧告です。国際連合に設置されている国際連合危険物輸送および分類調査専門家委員会が2年ごとに発表しています。各国によって危険物の概念が異なるため、国際貿易を行う場合は国連がルールを決めているのです。規制をきちんと行うことで、危険物の安全が確保できます。日本における消防法とは、まったく異なるものです。危険物取扱者の資格試験に必ず出題されるとは限りませんが、覚えておいて損はありません。危険物が何なのか知るためにも、理解する必要があります。
3-2.分類の詳細
国連危険物輸送勧告で定められている危険物は、第1類~第9類まであります。それぞれの分類は以下のとおりです。
- 分類1:火薬類(爆発物)
- 分類2:高圧ガス
- 分類3:引火性液体類
- 分類4:可燃性物質類
- 分類5:酸化性物質類
- 分類6:毒物類
- 分類7:放射性物質等
- 分類8:腐食性物質
- 分類9:有害性物質
3-3.GHSによる危険物とは
国連危険物輸送勧告に基づく航空・海上・陸上・鉄道の規制は、輸送安全に限定されています。しかし、貯蔵や取り扱いまで範囲が拡大されたものがGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)なのです。GHSは、「物質および混合物に固有な危険有害性を特定し、危険有害性に関する情報を伝えること」を目的としています。GHSの規定が適応される物質は、健康有害性・環境有害性・物理化学的危険性に分類されるのです。
- 健康有害性:急性毒性・皮膚腐食性・発がん性・生殖毒性など
- 環境有害性:オゾン層への有害性・水性環境有害性
- 物理化学的危険性:爆発物・高圧ガス・自己反応性化学品・酸化性液体など
4.危険物取扱者の試験概要と勉強法について
危険物を保管・取り扱うためには、危険物取扱者という資格を取得しなければなりません。試験概要と勉強法などについて詳しく説明します。
4-1.危険物取扱者の資格種類
危険物取扱者は、甲種・乙種・丙種(へいしゅ)の3つにわかれています。資格の種類によって取り扱える危険物が異なるので注意が必要です。それぞれの資格の特徴について詳しく以下にまとめてみました。
- 甲種:全種類の危険物の取り扱い・立ち会いが可能
- 乙種:免状を取得した類の危険物だけ、取り扱い・立ち会いが可能
- 丙種(へいしゅ):第4類危険物のうち、特定の危険物だけの取り扱いが可能
4-2.試験概要
それでは、危険物取扱者の試験概要について詳しく見ていきましょう。資格試験は、「一般財団法人 消防試験研究センター」が行っています。
4-2-1.試験日程
試験は前期・後期にわかれており、全国各地の試験場や資格の種類によって異なります。前期は4月~9月、後期は10月~3月です。詳細は、試験日程(全国一覧)をご覧ください。
4-2-2.受験料
受験料は資格の種類によって異なります。甲種は5,000円、乙種は3,400円、丙種(へいしゅ)は2,700円です。郵便局の窓口で払い込みを行うことになるため、間違えないように注意してください。
4-2-3.申し込み方法
危険物取扱者の申し込み方法は、書面申請と電子(インターネット)申請の2つがあります。書面申請の場合は、受験する試験の種類ごとに必要な書類をそろえて、受付期間内に申請しましょう。申請窓口は消防試験研究センター中央試験センター(東京都)、消防試験研究センター各都道府県支部になります。必要な書類に関しては、ホームページをご覧ください。電子申請の場合もホームぺージから可能です。
4-3.危険物の分類の覚え方
取り扱いたい危険物を明確にしたうえで、毎日地道に暗記していきましょう。危険物の分類やそれぞれの特徴を暗記するためには、毎日頭に入れ続けることが大切です。休みの日に一気に勉強をするのではなく、毎日数十分でもいいので勉強を続けてください。特に、必要な数値や名称などは必ず覚えておかなければなりません。すべてを丸暗記するのではなく、必要な部分だけ覚えることがポイントでもあります。
5.危険物に関してよくある質問
危険物に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。
5-1.指定数量の計算方法とは?
危険物を一定以上保管する場合は、その量が指定数量の何倍であるのか確認しなければなりません。なぜなら、倍数の値によって法規制の基準が異なるからです。指定数量の倍数を求める計算式は、【危険物の貯蔵量÷危険物の指定数量】となります。また、消防法に基づき、保管・取り扱いの規制は各自治体によって異なるため、注意しておかなければなりません。危険物の指定数量については、こちらのページをご覧ください。
5-2.危険物を輸送する際の注意点とは?
危険物を運搬する場合は、複数の種類の危険物を同時に運ぶことができます。しかし、混載可能・不可能な危険物があるため、注意しておかなければなりません。基本的に、類の数を足して7になる物質は混載可能です。ただし、危険物第4類だけは、2類・3類・5類がオン債可能となっています。
5-3.毒物および劇物取締法における分類とは?
危険物の中には、毒物・劇物となるものも存在しています。毒物・劇物は毒物および劇物取締法(毒劇法)によって定められており、主に4つの種類に分類されているのです。
- 毒物:誤飲した場合の致死量が2グラム程度以下のもの
- 劇物:誤飲した場合の致死量が2~20グラム程度のもの。刺激性が著しく大きい
- 特定毒物:毒物のうちきわめて毒性が強いもの
- 普通物:毒物・劇物・特定毒物に該当しないもの
5-4.危険物取扱者に受験資格はあるのか?
乙種と丙種(へいしゅ)はありませんが、甲種は受験資格があります。甲種の受験資格は以下のとおりです。
- 大学などにおいて化学に関する学科等を修めて卒業した者
- 大学などにおいて化学に関する授業科目を15単位以上修得した者
- 乙種危険物取扱者免状を有する者
- 修士・博士の学位を有する者
5-5.危険物保安監督者とは?
危険物の取り扱い作業において、保安の監督業務を行う者のことです。甲種・乙種危険物取扱者として6か月以上の実務経験がある者は、危険物保安監督者として働くことができます。
まとめ
日本の消防法における危険物は、第1類~第6類に分類されています。それぞれの危険物によって特徴や取り扱い・保管方法が異なるものです。そのため、危険物を扱う有資格者は、きちんと把握しておかなければなりません。また、危険物を航空・海上で輸送する場合は、国連危険物輸送勧告に基づきます。国連危険物輸送勧告に基づく危険物と、消防法に基づく危険物の分類は異なるものであることを知っておきましょう。きちんと把握することで、危険物を正しく取り扱い、保管・輸送できます。