動植物油類とは、動植物から抽出した油の中で、1気圧の時の引火点が250度未満のものです。私たちが食用油として使っているものの中にも、動植物油類に分類されているものがあります。危険物では第4類に分類されており、指定数量以上を取り扱ったり貯蔵したりする場合は、危険物取扱者の資格が必要です。資格試験でも、動植物油類について出題されることもあるでしょう。
そこで、今回は動植物油脂類の特徴などについて解説します。
- 動植物油類とはどのような物質?
- 動植物油類の特徴や消化方法などについて
- 動植物油類を取り扱える資格について
- 動植物油脂類や危険物取扱者に対するよくある質問
この記事を読めば、危険物取扱者の資格を取得する方法なども分かることでしょう。危険物取扱者の資格取得を目指している方も、ぜひ読んでみてください。
1.動植物油類とはどのような物質?
動植物油類とは、文字どおり動植物から取れた油のことであり、その中でも引火点が250度未満のものが危険物第4類に指定されています。食用油としておなじみのごま油やオリーブオイルも動植物油類の一種です。ご家庭に常備してある方も多いことでしょう。
動植物油類は引火点がかなり高く、油を熱し続けなければ引火することはありません。そのため、ほかの危険物に指定されている物質に比べると危険度は低いように思われます。しかし、動植物性油脂類には、自然発火をする危険性があるのです。天かすを大量に放置をしていたり、植物油を鍋に入れたまま放置をしていたら発火をした、という話を聞いたことがある方もいるでしょう。次の項で、自然発火を含めた動植物性油類の特徴を解説します。
2.動植物油類の特徴や消化方法などについて
この項では、動植物油類の特徴や指定数量・火災予防方法などを紹介します。ほかの油類に比べると何が違うのでしょうか?
2-1.よう素価について
よう素価とは、油脂100gが吸収するよう素の量のことです。よう素価が高いほど、自然発火しやすい物質になります。また、よう素価は不和脂肪酸を多く含む油脂ほど、高くなるのです。不和脂肪酸というと脳神経を発達させる物質として有名ですが、不和脂肪酸は空気中で酸化すると酸化熱を含みやすく、これが、自然発火の原因となります。
また、不和脂肪酸が多い油脂類ほど空気中の酸素と結びつきやすく、その結果、油が固まりやすくなるのです。油が固まる現象を「固化(こか)」と言います。つまり、よう素価が高い油脂ほど不和脂肪酸が多くて固化しやすく、自然発火の危険性も高くなるのです。
2-2.動植物油類の種類
動植物油類は、
- 乾性油(かんせいゆ・よう素価130以上・アマニ油など)
- 半乾性油(はんかんせいゆ・よう素価100~130・大豆油など)
- 不乾性油(ふかんせいゆ・よう素価100以下・オリーブ油など)
の3種類に分類されます。乾性油が最も固まりやすく、かつ自然発火の可能性が高い油です。
2-3.動植物油類共通の特徴
動植物油類の共通の特徴として自然発火のほかに、引火点が高い・水より軽い・水に溶けない・発火すると燃焼温度が高くなり、消化が困難といったものがあります。
布地にしみこんだ油でも自然発火する可能性があるので、アロマオイルをふいたタオルを洗濯が不十分で乾燥機に入れたら発火した、という例もあるのです。
また、てんぷら油の火災映像などを見れば分かるように、燃えている油に水を入れると激しく反応します。ですから、動植物油類が発火した場合は、水による冷却消火はできません。
2-4.火災予防方法・消化方法・指定数量について
動植物油類は、種類に関係なく1,0000リットルが指定数量です。これ以上の油脂類を貯蔵したり取り扱ったりする場合は、危険物取扱者の資格が必要になります。ですから、食用油を作っている工場などは、危険物取扱者が選任されているのです。
動植物油類の火災予防方法は、換気をよくして風通しの良い場所に保管し、油脂そのものは可能な限り空気に触れさせないようにします。空気に触れると自然発火する可能性が高くなるばかりでなく、油脂類が劣化する恐れもあるのです。
万が一火災が発生した場合は、泡や二酸化炭素・ハロゲン化合物による窒息消化を行います。
3.動植物油類を取り扱える資格について
動植物油類は、危険物第4類に分類されています。ですから、指定数量以上の取り扱いや貯蔵をする場合は、危険物取扱者甲種や乙種4類の資格が必要です。
危険物取扱者乙種4類は危険物取扱者を代表する資格であり、毎年多くの方が資格取得にチャレンジします。甲種は、取得すると消防法に指定されているすべての危険物の取り扱いや保安監督業務ができる資格です。
危険物取扱者の資格を取得するには、消防試験研究センターが主催する、資格試験を受けて合格しなければなりません。乙種は受験資格が定められていませんが、甲種は大学で化学に関する単位を取得していること、などの受験資格が入ります。詳しくはセンターのホームページで確認してください。
試験の申し込み方法や勉強のコツなどは、こちらの記事に詳しく記載されているので、ぜひ読んでみましょう。
4.動植物油脂類や危険物取扱者に対するよくある質問
Q.危険物取扱者の資格を取得すると、どのようなメリットがありますか?
A.指定数量以上の危険物を取り扱っている施設や職場から、求人があるでしょう。乙種4類を取得すれば、ガソリンや灯油なども取り扱えます。甲種を取得すればすべての危険物を取り扱えますので、より活躍の場は広いでしょう。
Q.指定数量未満の動植物油類でも、自然発火したら危険ですか?
A.はい。家庭で発生する火災の何割かは動植物油類が原因です。2016年12月に糸魚川市で発生した大火災も、動植物油類から出火し、延焼しました。
Q.動植物油類を大量に使う中華料理店などは、危険物取扱者の選任が必要でしょうか?
A.どれほど大きな店舗でも、1,0000リットル以上の植物油を常時保管しているところはありません。しかし、チェーン店で使う食材をまとめて保管している倉庫のような場所では、選任が必要になることもあるでしょう。
Q.動植物油類は引火点が高いのですが、それによる特徴などはありますか?
A.常温の状態では、火種を近づけても引火しません。ですから、常温で保管している限りはペットボトルやビンなどいろいろな容器で保管ができます。
Q.サラダ油は動植物油類ではないのでしょうか?
A.サラダ油は、複数の植物油を混合した商品です。ですから、動植物類には指定されていません。
5.おわりに
いかがでしたか? 今回は、動植物油類の特徴などについて解説しました。どのご家庭のキッチンにもある油が危険物に指定されていることに、驚いた方もいるでしょう。動植物油類も一度火がつけば消化が困難です。ですから、指定数量以下でも取り扱いには十分な注意が必要になります。