危険物とは、消防法によって指定されている火災を起こしやすい物質の総称です。ガソリンや灯油など、私たちの生活に欠かせないものの中にも、危険物に指定されているものはたくさんあります。危険物は消防法によって取り扱いや保管の方法が定められており、それに反すると違反処理の対象になるのです。違反処理はマニュアル化されたものがネットにも掲載されていますが、分かりにくいという方もいるでしょう。
そこで、今回は危険物の違反処理について解説します。
この記事を読めば、違反処理の内容や違反処理を行うまでの流れもわかるでしょう。危険物取扱者の資格取得を目指している方も、ぜひ読んでみてくださいね。
危険物の基礎知識
前述のとおり、危険物とは消防法に指定されている火災を起こしやすい物質の総称です。危険物の特徴ごとに1~6類に分類されており、物質ごとに指定数量が定められています。この指定数量を超えた危険物を保管したり取り扱ったりする場合は、危険物取扱者の資格保持者を選任したうえ、消防法に基づき、貯蔵所や取扱所などを設けなければなりません。
また、移送や運搬にも規制がかかります。なお、自治体によっては危険物の保管や取り扱いにかんして独自の条例を設けているところもあるので、注意が必要です。自治体によっては、指定数量未満でも危険物取扱者の選任などが必要になります。
危険物の違反処理とは?
この項では、危険物の違反処理について解説します。どのようなものなのでしょうか?
違反処理とは?
違反処理とは、法律などで定められている規定に違反した際に、罰則等を与えることです。危険物の場合は消防法によって取り扱い・貯蔵・運搬などの規制が行われているので、消防法に違反した際に違反処理が行われます。違反処理には、立ち入り検査・警告・命令・失効などの種類がありますが、刑事罰ではないので禁固刑などはありません。
違反処理の基準
消防法に基づく違反処理は、主に、危険物が適切に取り扱いや貯蔵・運搬がされていなかった時に行われます。また、指定数量以上の危険物の取り扱いや貯蔵をしていたにもかかわらず、危険物取扱者が選任されていなかった場合なども、違反処理の対象です。
また、危険物の取り扱い方や貯蔵のやり方だけでなく、建物に適切な消防設備が設置されていなくても違反処理の対象になります。たとえば、危険物は適正に管理されていても、消防設備の点検が不十分だったり、避難設備の管理が適正でなかったりしても、違反処理の対象になるので注意しましょう。
違反処理を行うのは誰?
危険物に関する違反処理は、消防庁の管轄です。立ち入り検査等をする場合は、消防署員が行います。ただし、消防署員が危険物の所有者などに危害を加えられる恐れがある場合は、警察官が同行することもあるでしょう。
危険物の違反処理の流れや種類
この項では、危険物の違反処理の流れや、違反処理の種類について解説します、どのような違反処理の種類があるのでしょうか?
違反処理の種類
危険物の違反処理には、次のような種類があります。
- 立ち入り検査:危険物の貯蔵・取り扱いなどが、消防法に違反している疑いがあるので、消防署員が検査をする
- 違反調査:危険物の貯蔵や取り扱いが法律に違反しているなどの告発があった場合、調査を行う
- 警告:期限を定め、期限までに指定されたことを実施するように、文章で申し渡す
- 命令:警告に従わなかった場合、より重い処分(許可の取り消し)などの処置を命ずる
- 告発:命令違反等の罰則規定に違反した事実があり、告発をもって措置すべきという違反に対して行われる
- 代執行:警告・命令を行っても受け入れられない場合、行政が事業主に代わって改善を行い、費用を請求する
なお、立ち入り検査や違反調査がいきなり実施されることは、ありません。事前に必ず文章などで、立ち入り検査や違反調査があることを知らせます。
また、警告を聞かずに命令処分が下された場合、その前に弁明の機会が与えられるのです。弁明次第によっては、警告が取り消されることもあるでしょう。
違反処理の流れ
違反処理までの流れは、こちらにマニュアル化されたPDFが掲載されていますので、一読してみるとよいでしょう。
簡単に説明すると、まずは立ち入り検査や違反調査を行い、警告を行います。立ち入り調査をする場合は、カメラやメジャーなどを調査員が持参し、法律にどのように違反しているのか事業主などに説明を行いながら行うのが一般的です。すでに命令違反をしている場合は、告発から調査、という流れになることもあるでしょう。
警告を受けた時点で改善すれば、それ以上のことはありません。ただし、警告を受けたという事実は書類に記載され、新たに危険物の取扱所や貯蔵所を作る際、許可が下りにくくなることもありますので注意しましょう。警告を無視していると、命令が下されます。
業務停止や危険物取扱の許可取り消しなど、より重い処分が下されることもあるでしょう。こうなると、再び危険物を貯蔵したり取り扱ったりしたいという場合、許可がより下りにくくなるのです。
命令違反をくり返し、火災発生の危険性が高まっている場合、代執行が行われることがあります。この場合は行政が業者に変わって改善を行いますが、その費用は業者に請求されるのです。なお、支払わない場合は財産等が差し押さえられます。
注意点
立ち入り検査等が行われる時点で、危険物の取扱所・貯蔵所としての信頼は下がっています。命令を受けた場合は、危険物取扱所や貯蔵所の許可が取り消されることも珍しくありません。
刑事事件のようにいきなり調査員がやってきて、「立ち入り検査をします」ということはありませんので、事前に通告されたら法律に違反していないかチェックを行い、改善策を取りましょう。そうすれば、警告などを受けずにすむでしょう。
なお、資金がないので法律に基づいた貯蔵方法や取り扱い方法を取れなかったというのは、理由になりません。資金よりも安全が優先されるのです。立ち入り検査で違反が見つかった場合は、違反施設台帳等などが作成され、改善が行われるまで管理され続けます。
違反処理に関するよくある質問
Q.立ち入り検査の結果違反がなかったという場合は、どうなりますか?
A.一定期間指導が行われるのが一般的です。
Q.危険物取扱者が罪に問われることはありますか?
A.事業主と共に積極的に法律違反を行っていない限り、罪に問われることはありません。
Q.違反処理に逮捕などはないのですか?
A.消防署が行政に火災の危険があると告発し、刑事事件になれば逮捕などもあります。
Q.警告に猶予はあるのでしょうか?
A.「この時期までに改善してください」という期限が設けられます。
Q.命令に従わず、火災が発生した場合はどうなるのでしょうか?
A.より重い罪に問われます。社会的な信用も失われるでしょう。
おわりに
今回は、危険物の違反処理にについて解説しました。消防庁が行うので逮捕や罰金などはありませんが、危険物取扱所・貯蔵所の許可取り消しなどの重い処分が科せられることもあります。立ち入り検査をするという通知が来た場合は、すぐに取扱所・貯蔵所などの点検を行い、法律に違反していないか確認をしましょう。