社会人にも人気の資格「危険物取扱者」。取得すると消防法で定められた指定数量の危険物を扱う施設の保安や管理を行えます。では、法令に定められた危険物貯蔵所とはいったいどのようなものがあるのでしょうか?
そこで今回は、危険物取扱者を保安員として選任しなければならない施設をご紹介しましょう。危険物取扱者の資格を保持していれば、そのような施設を所持している企業への就職や転職が有利になります。
危険物取扱者の資格取得を目指している方はぜひ読んでみてくださいね。
- 危険物取扱者を選任する必要がある施設とは?
- 危険物保安監督者が必要な施設や選任条件とは?
1.危険物取扱者を選任する必要がある施設とは?
この項では、危険物取扱者の選任が必要な施設をご紹介します。
消防法によると、指定数量を超えた危険物を取り扱ったり、貯蔵していたりする施設には危険物取扱者の選任が必要とありますが、いったいどのような施設なのでしょうか?
1-1.危険物取扱者を選任する必要がある施設
危険物取扱者が必要な施設とは、消防法で定められた指定数量の危険物を所持、保管、製造している施設です。
もっとも私たちの身近にある危険物取扱者が必要な施設はガソリンスタンドですね。
危険物取扱者の中乙種4類、通称乙4がもっとも人気があるのは、ガソリンスタンドを経営するためには必要な資格だからです。
ちなみに危険物取扱者甲種を取得していると、すべての危険物が取り扱えます。
乙種は取得した類のみの危険物を取り扱うことができます。
1-2.危険物取扱者であれば、経験は必要ないの?
消防法で定められた数量の危険物を扱うだけならば、危険物取扱者の資格を取得した人ならば誰でもできます。
しかし、特定の危険物の製造所及び保管所では、危険物保安監督者を選出し、市町村へ提出しなくてはなりません。
この保安監督者になるためには、6か月以上の実務経験が必要です。
では、いったいどのような施設が危険物保安監督者の選任が必要なのでしょうか。
それは次の項でご説明しましょう。
ちなみに、危険物を単に取り扱うことと、保安監督者になることとでは責任の重さが違います。
危険物保安監督者には年齢、性別等の決まりはありませんが多くの職場では経験のある、立場が上の社員がなることが多いです。
2.危険物保安監督者が必要な施設や選任条件は?
この項では、危険物保安監督者が必要な施設や選任条件などをご紹介していきます。
いったいどのような施設に必要なのでしょうか?
2-1.危険物保安監督者が必要な施設は?
危険物保安監督者が常に必要な施設は以下の通りです。
- 製造所
- 屋外タンク貯蔵所
- 給油取扱所
- 移送取扱所
わかりやすくいうと、製造所は「危険物を作っている場所」です。化学工場などがこれにあたります。屋外タンク貯蔵所とは屋外にあるタンクで危険物を貯蔵してある場所のことです。たとえ会社自体が危険物を取り扱っていなくても、外に大きな給油タンクなどがある場合は危険物保安監督者が必要なのです。北国などに多いですね。
給油取扱所とはガソリンスタンドのことです。危険物取扱者の資格を取得した人が6か月たってから保安監督者に起用される、ということもあるでしょう。また、同じ系列の店だからといって数店舗の保安監督者を兼任することはできません。必ず一店舗にひとり、保安監督者が必要です。ですから多数の店舗を抱えている会社には、たくさんの危険物取扱者の資格保持者が必要なのです。
最後の移送取扱所とは、配管やポンプなどで危険物を輸送する施設のことです。沿岸の石油プラントなどに設置されていることが多いですね。
また、例外としてタンクローリーなどの移動タンク貯蔵所は例外的に保安監督者を置く義務はありません。これは、タンクローリーの安全は運転手次第だからです。
ですから、タンクローリーなど危険物を運搬する車の運転手は、熟練した技術が求められるのです。
さらに、企業によっては複数の施設を持っている場合もあるでしょう。たとえば製造所が屋外タンク貯蔵所をもっていたり、屋外タンク貯蔵所と移送取扱所がくっついていたりすることもあります。その場合は、ひとつの施設につきひとりの保安監督者が必要です。すぐ近くにあるのだから、と兼任することはできません。ですから、大規模な施設ほど、多くの資格保持者が必要なのです。
2-2.保安監督者の役割とは?
危険物保安監督者は、前述したように6か月以上の実務経験が必要です。保安監督者に選任されたら、
- 危険物を取り扱う人へ指導を行う
- 危険物保安員への指示を行う
- 隣接する施設の関係者との連絡を保つ
- 災害が発生した場合、速やかに消防署に連絡をして応急処置をする
などの業務があります。危険物は取り扱いの方法を間違えると大規模な火災を起こす危険があります。ですから、保安監督者の責任の下、社員に扱い方を指導する必要があります。
また、危険物保安員とは、危険物を保管している施設を維持、管理している人たちです。これは危険物取扱者の資格がなくても就くことができますが、かならず保安監督者の指示の下で働く必要があります。
さらに、危険物の中にはいったん発火すると、水では消火できないものもあります。ですから危険物を保管してある施設が火災になった場合は保安監督者は速やかに消防士へ、発火している危険物を伝えたり、近隣住民を避難させたりする必要があるでしょう。その為に、普段から近隣住民と定期的に連絡を取り合う必要があります。
2-3.講習を忘れず受けること
危険物を取り扱う仕事をしている場合は、保安監督者を含めて3年に1度、講習を受ける必要があります。例外はありませんので忘れずに受講しましょう。
また、資格取得後、初めて危険物を取り扱う仕事に就く場合は、1年以内に講習を受けなくてはいけません。講習を受けないと最悪の場合免許返納を求められますので、注意してください。
なお、危険物保安監督者に任命されながら、消防法あるいは消防法に基づく命令の規定に違反したときや、任務を怠った場合は市町村長の命令で解任される場合があります。こうなってしまうと、会社に多大な迷惑がかかります。一度選任されたら、必ず勤めきりましょう。
危険物は厳重に保管されていますが、ヒューマンエラーによって大事故が起こる可能性はゼロではありません。「危険物」は取り扱いを間違うと危険なので「危険物」と言われるのです。そのことを忘れてはいけません。
おわりに
今回は危険物取扱者が必要な施設や、危険物保安監督者の仕事内容などについてご紹介しました。
まとめると
- 指定量以上の危険物を製造、取扱、保管してある施設は危険物取扱者の資格保持者を置いておかなくてはならない
- 特定の危険物を保管、製造、取扱をしている施設は危険物保安監督者が必要
- 保安監督者になるには6か月以上の実務経験が必要で、3年に1度講習を受ける必要がある
ということです。危険物保安監督者になれば、資格手当がつく場合もあるでしょう。
また、危険物保安監督者が必要な職場では、実務経験のある危険物取扱者の資格保持者は大変重宝されます。危険物取扱者の資格保持者はたくさんいますが、それを必要としている企業や施設もたくさんあるのです。中には、「こんなところにも必要なのか」というところもあるでしょう。ビル管理の仕事などの場合にも、資格取得者が優遇されることもあります。