工場で火災が発生すると、住宅で火災が発生したときよりも被害が大きくなるケースが多いです。また、化学物質や危険物を取り扱っている工場は爆発や有毒ガスが発生するケースもあるでしょう。つまり、工場の防火はとても重要です。
そこで今回は、工場の防火対策や防火対策における危険物取扱者の役割について、ご紹介します。火災を予防することも大切ですが、万が一火災が発生したときも危険物取扱者はやらなければならないことがあるのです。今回は、それもご紹介しましょう。危険物取扱者の資格取得を目指している方も必見ですよ。
- 工場火災はなぜ怖い?
- 工場火災の原因と対策は?
- 工場の防火対策における危険物取扱者の役割
1.工場火災はなぜ怖い?
まず始めに、工場火災の特徴をご紹介します。住宅火災との違いはなんでしょうか?
1-1.激しい火災になりやすい
工場にはさまざまなものがあります。引火性のものもありますし、激しく燃焼するものもあるでしょう。それらに火がつけば、激しい火災になりやすいです。風向きしだいでは、周辺の建物に燃え移る可能性もあるでしょう。
1-2.爆発の危険がある
住宅火災の場合は、激しく燃え上がることはあっても爆発することはめったにありません。しかし、工場火災の場合は爆発の危険があります。爆発が起これば、風圧で周辺にある建物のガラスが割れたりするなど、被害がより拡大しやすいでしょう。
1-3.有毒ガスが発生する危険がある
工場で扱っているものの中には、燃焼すると有毒ガスが発生するものもあるでしょう。また、ガスではなく悪臭が発生する場合もあります。悪臭は長い間消えないものもあるので、周辺住民にとっては迷惑です。
1-4.消火に水が使えない場合がある
危険物の中には、水と反応すると激しい反応を起こすものもあります。このような危険物が発火した場合は、消火に水が使えません。ですから、消火に時間がかかる場合もあるでしょう。場合によっては、数日がかりになるケースもあります。
また、消化剤の種類によっては周辺住民が避難しなければならない場合もあるでしょう。つまり、工場火災が起きれば周辺住民も被害を受けやすいのです。
2.工場火災の原因と対策は?
この項では、工場火災の主な原因と対策をご紹介します。「危険物から発火するケースが多いのでは?」と思う人もいるでしょうが、実際のところはどうなのでしょうか?
2-1.電気系統が原因の火災
工場によっては、高電圧の電流が流れているところもあります。また、大規模な工場ほど、細かいところに目が行き届かなくなるでしょう。配電盤もそのひとつです。コンセントにほこりがたまって火花が燃え移ったり、ネズミがケーブルをかじって絶縁被覆が破れ、配線がむき出しになったりしても火事になりやすいでしょう。
絶縁体である樹脂の劣化なども火災の原因になります。機器類の定期点検をしっかり行い、劣化していたり破損していたりしたら、すぐに交換しましょう。ほこりもしっかりと取っておいてください。
2-2.静電気による火災
工場で扱う物質の中には、静電気の火花でも着火してしまうほど引火性の高いものもあります。静電気は季節ごとに発生しやすくなったりしにくくなったりするので、つい対応がおざなりになってしまう場合もあるでしょう。特に危険物第4類に分類される、可燃性液体を扱う工場は静電気対策をしっかりと行ってください。静電気を発生させない器具なども利用しましょう。
2-3.溶接作業が原因の火災
今は、工場で裸火(はだかび)を使うことはほとんどありません。しかし、溶接作業をする工場は多いでしょう。ご存じの方も多いと思いますが、溶接作業中は花火が散ります。これが燃えやすい物質に飛び散ると、火災発生の原因になるのです。燃えやすい物質というと紙類などを思い浮かべる方もいるでしょうが、ほこりや油を含んだウエスなどにも着火しやすいでしょう。
「まさかこんなものに」と思うものに、着火することもあります。溶接作業をする際は、周囲に念入りに水をまいて行うなど対策を立てておきましょう。整理整頓も大切です。また、溶接作業が終わったらしっかりと周りを確認して、火の気がないか確かめてください。
2-4.機械の操作をあやまったことが原因の火災
工場で使う機械の中には、油圧で動くものが多いです。また、塗装作業をする機械はガスを使う場合もあるでしょう。機械操作をあやまって、油やガスに引火した場合も火災が発生します。
これは、正確にいえばヒューマンエラーが原因の火災です。作業になれが生まれれば、勝手に作業を簡略化する人もいるかもしれません。ですから、機械の危険性や作業手順を守る大切さを、作業員にしっかり教育しておくことが大切です。
3.工場の防火対策における危険物取扱者の役割
では最後に、工場の防火対策における危険物取扱者の役割をご紹介します。ぜひ参考にしてください。
3-1.危険物の管理
危険物の中には、火気厳禁のものが多いです。ですから、危険物取扱者は危険物の管理を徹底しましょう。危険物を専用の保管庫や貯蔵庫に入れるのはもちろんのこと、危険物を保管している容器や保管場所自体も定期的に点検してください。劣化したり破損したりしていると危険です。また、工場内に危険物が不用意に置きっぱなしになっていないかどうかも確認しましょう。
3-2.危険物を取り扱うときの監督
危険物取扱者は、危険物の恐ろしさをよくわかっていると思います。しかし、資格を持っていない人の中には、いまひとつ危険性を理解していない方もいるでしょう。特に、毎日使っている物質だと、つい「このくらいいいだろう」と危険な取り扱い方をするかもしれません。これは大変危険です。
危険物の取り扱い方を間違えると、発火や爆発の危険があります。危険物取扱者の資格保持者以外が危険物を取り扱う場合は、しっかりと監督してください。
3-3.危険物の取り扱い方を教える
危険物は危険物取扱者が監督していれば、資格保持者以外でも取り扱えます。しかし、大勢の従業員があちらこちらで危険物を取り扱っていれば、危険物取扱者の目が行き届かないこともあるでしょう。
そこで、定期的に危険物の取り扱い方を教える講習会などをひらくと、防火対策に大変効果的です。半年に1度ほどでよいので、ぜひ実施しましょう。
3-4.万が一火災が発生したら?
万が一危険物を保管や貯蔵してある場所で火災が発生した場合は、危険物取扱者が消防に通報しましょう。その際に、危険物があることや消火方法を伝えてください。水を使った消火ができない場合、そのことを伝えていなければ消火に時間がかかる可能性もあります。また、周辺住民の避難が必要な場合は率先して行いましょう。
おわりに
今回は、工場火災の特徴や原因、さらに危険物取扱者が行える防火対策についてご紹介しました。
まとめると
- 工場火災は発生すると被害が大きくなりやすい。
- 工場火災の原因は設備の破損やヒューマンエラーでも起きる可能性がある。
- 危険物取扱者は、危険物の保管や取り扱いの監督をしっかりと行う必要がある。
ということです。
危険物は消防法で取り扱いの方法が厳重に定められているので、かえって火災の原因になりにくいでしょう。しかし、別の原因で火災が発生した場合、危険物に引火すれば被害が拡大します。
また、一度火災が起きれば危険物だけ抱えて避難することはできません。危険物を取り扱っている工場は、絶対に火災を出さないように設備の点検や従業員の教育をしっかりと行いましょう。さらに、日頃から整理整頓を行っているとほこりなどもなくなり火災が発生しにくくなります。