危険物取扱者の中で、最も人気があるのが乙種4類、通称乙4です。
この資格を取得すれば第4類危険物に指定されている可燃性液体を扱えます。
この第4類危険物を保管したり取り扱ったりする施設に必要なのが、危険物保安統括管理者です。
今回は、この危険物保安統括管理者の役割についてご説明します。
この役職に就くには、危険物取扱者の資格は必要なのでしょうか?
また、危険物保安統括管理者が必要な施設の条件についてもご紹介します。
危険物取扱者の資格取得を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 危険物保安統括管理者とは?
- 危険物保安統括管理者を選任するまでの流れとは?
- なぜ、第4類危険物の施設だけ危険物保安統括管理者が必要なのか?
- おわりに
1.危険物保安統括管理者とは?
危険物保安統括管理者とは、大量の第4類危険物を扱う事業所で保安業務を統括管理する役割を担(にな)う人のことです。
大量の第4類危険物を取り扱っている事業所では、同一敷地内に複数の危険物を取り扱う施設があるのも珍しくありません。
たとえば、ガソリンスタンドの場合は、貯蔵所と取扱所と販売所がひとつの施設の中にあります。
ですから、それぞれに危険物保安監督者や、危険物保安員が必要です。
しかし、危険物保安監督者や保安員の数が多くなるほど、連携が取れにくくなるでしょう。
そこで、まとめ役として危険物保安統括管理者を選任しておくのです。
ですから、働いている人ならば誰でもよいというわけではありません。
工場長などある程度地位のある人が選任されることが多いでしょう。
また、誤解されやすいのですが危険物保安統括者に選任されるためには、特に資格などは必要ありません。
指定数量以上の危険物を取り扱う際に必要は、危険物取扱者の資格を持っていなくても大丈夫です。
前述したように危険物保安統括管理者とは、実際に危険物を取り扱ったり管理したりすることはありません。
危険物を取り扱ったり管理したりする人を管理するのが仕事です。
ですから、資格がなくても構いません。
危険物保安監督者になるためには、危険物取扱者の資格と実務経験が必要なので覚える際には注意してください。
2.危険物保安統括管理者を選任するまでの流れとは?
では、危険物保安統括管理者を選任する過程はどのようなものでしょうか?
この項では、危険物保安統括管理者が必要な施設の条件や選任までの流れをご紹介していきます。
2-1.危険物保安統括管理者の選任が必要な施設とは?
危険物保安監督者の選任が必要な施設とは、第4類危険物を取り扱ったり保管していたりする場所です。
第4類危険物とは引火性液体のことで、私たちの最も身近にある危険物の石油類もこれに含まれます。
さらに、製造所や一般取扱所では指定数量の倍数が3000以上のとき。移送取扱所では指定数量以上を取り扱う施設の場合は選任の必要があります。
なお、移送取扱所とはパイプラインなどで別所へ危険物を運ぶ施設のこと。
タンクローリーは輸送取扱所になりますので、混同しないように気を付けましょう。
2-2.選任と解任について
危険物保安統括管理者を選任するのは、施設の所有者が行います。
工場長などの責任者ではありませんので注意しましょう。
また、解任も同じように施設の所有者が行います。
つまり、顔も見たことのないオーナーに選任されることもあるということです。
また、実際は責任者が選び、所有者の名前で選任されることもあります。
さらに、選任や解任を行った際には、市町村の担当者に届け出てください。
これを怠ると罰せられることもありますので注意しましょう。
これは、危険物を大量に扱っている施設が事故を起こした場合、大規模な火災が発生する可能性があるからです。
指定数量の倍数が3000以上もの第4類危険物を取り扱っている施設が町中にあることは少ないでしょう。
しかし、大量の危険物が現認の火災は広範囲にわたることもあります。
たとえ海沿いなどにある施設でも、火災を起こせば町中まで炎が迫ってくることもあるでしょう。
また、大地震などの天災が起これば火災が発生することもあります。
実際、東日本大震災では石油コンビナートで火災が発生しました。
ですから、保安統括管理者の氏名を把握しておくことで自治体は万が一事故が起きたときにスムーズに連絡がつくようにしています。
2-3.万が一火災が起こったら?
危険物を取り扱う施設で、実際に危険物を取り扱ったり危険物を保管してある施設を点検したりするのは、保安監督者や保安員です。
危険物保安統括管理者は、あまりやることがありません。
ですから、工場長や社長が兼任しても特に問題はないわけです。
しかし、火災が起こった場合は、統括管理者としての任務が発生します。
状況を把握し、自治体や消防とのパイプ役を務めることもあるでしょう。
また、施設のすぐ近くで火災が発生した場合も、燃え移らないように危険物保安監督者や保安員に指示を出す必要があります。
ですから、名ばかりの管理職ではありません。
施設の様子を把握し、部下を動かす手腕が問われます。
なので、立場が上の人でないと務まらないのです。
3.なぜ、第4類危険物の施設だけ危険物保安統括管理者が必要なのか?
第4類危険物とは、前述したように引火性可燃液体が分類されています。
この中には石油類が含まれているのです。
石油類というとガソリンをイメージする方も多いでしょう。
そのほかにも、灯油や軽油なども石油類の一種。
つまり、日本で最も取り扱われることの多い危険物が、第4類危険物なのです。
ですから、指定数量の倍数が3000以上の量を扱っている施設も少なくありません。
さらに、石油類の特徴として引火点が低いというものもあります。
危険物取扱者の資格取得を目指して勉強している方ならごぞんじでしょう。
石油類の中でも、ガソリンは常温や低温でも種火があればあっという間に燃え広がってしまいます。
しかも、冷水による消化ができません。
ですから、より厳重に管理する必要があるのです。
一般家庭でも灯油を保管しているという家は多いでしょう。
あまりに身近なために、ついつい管理をおろそかにしてしまうこともあるかもしれません。
しかし、灯油は扱い方を間違えたら大規模な火災の原因になります。
大規模施設でなくても管理は厳重に行いましょう。
危険物保安統括管理者はより安全に危険物を取り扱うために、必要な役職なのです。
4.おわりに
いかがでしたか?
今回は危険物保安統括管理者の役割について色々とご説明しました。
まとめると
- 危険物保安統括管理者とは、危険物を管理する人々を管理する役割である。
- 大量に危険物第4類を取り扱ったり保管していたりする施設では選任しなくてはならない。
- 危険物保安統括管理者になるためには、特に資格などは必要ない。
- 危険物保安統括管理者を選任したり解任したりしたら、すぐに市町村に届け出ること。
ということです。
危険物保安統括管理者という字面(じづら)だけ見ると、危険物を保管する責任を負う役職のようなイメージがあります。
しかし実際は、危険物を管理したり取り扱ったりする人を管理する役職なのです。
ですから、ある程度地位がある年配の人が選任されることが多いでしょう。
もちろん、危険物取扱者の資格を取得し、保安監督者をへて統括管理者に任命されることもあるかもしれません。
ですから、危険物取扱者の資格を取得しておいて損はないのです。