過酸化水素は、危険物第6類に分類されている物質です。
しかし、私たちの身の回りにあるたくさんの製品に利用されています。
そこで、今回はこの過酸化水素の性質や特徴をご紹介しましょう。
過酸化水素が含まれている製品や用途、さらに保管する際の注意事項などもご説明します。
過酸化水素は、濃度によって危険度が異なるのです。
では、どのくらいの濃度から危険になるのでしょうか?
答えは、この記事を読めばわかりますよ。
職場で過酸化水素をたくさん取り扱っているという方も、記事を読んでみてください。
- 過酸化水素の性質と特徴とは?
- 過酸化水素の使用法とは?
- 危険物としての過酸化水素
- おわりに
1.過酸化水素の性質と特徴とは?
過酸化水素はH2O2の化学式で表せる化合物です。
水に酸素原子が1個多くついたもの、といえばイメージしやすいでしょう。
「過水」と略して呼ばれることも多く、水溶液の状態で使われる藻が一般的です。
反応する物質によって強力な酸化剤にも還元剤にもなる特徴を持っています。
ですから、酸化剤、殺菌剤、漂白剤として幅広い場所で使われているのです。
過酸化水素の特徴として、常温の環境下では普通の水より粘性があります。
また、水に溶けやすいですが、不安定で濃度50%の常温のときに水と酸素に分解してしまうのです。
一般に市販されている過酸化水素はそれほど濃度が高くありませんが、濃度の高い過酸化水素は強い腐食性があり、爆発の危険もあります。
ですから、安定剤として水溶液を作るときにリン酸や尿酸を加えるのです。
また、高濃度の過酸化水素水が皮膚につくとヤケドのそれがあります。
そのため、高濃度の過酸化水素水を取り扱う場合は決して素手で触れないように注意しましょう。
2.過酸化水素の使用法とは?
この項では、過酸化水素の利用法についてご紹介します。
ご家庭にも過酸化水素を利用した製品があるかもしれませんよ。
2-1.工業利用
過酸化水素は製紙工場でパルプ漂白や排水処理などに利用されています。
また、半導体工場で部品の洗浄液としても利用されているのです。
紙は、皆様ご存じのようにパルプという木のチップからできています。
色がついたパルプから真っ白い紙を作るためには、漂白しなければなりません。
しかし、塩素系の漂白剤を使うと大量の廃棄物が生まれます。
半導体の洗浄液も同様です。
過酸化水素ならば、最終的には酸素と水に分離してしまうので、環境に優しく処理設備も必要ありません。
2-2.漂白剤
食品、衣類、住居用の漂白剤の多くに、過酸化水素は使われています。
特に、食品は食べても無害ということで、過酸化水素を使った漂白剤が主流です。
また、髪を脱色するための薬剤としても過酸化水素は使われています。
2-3.消毒薬
オキシドールやオキシフルという消毒剤の名前を、効いたことのある方は多いでしょう。
このような消毒薬の主原料が過酸化水素なのです。
過酸化水素を用いた消毒薬は、たくさん販売されていますが、濃度によって使い分けられています。
過酸化水素の濃度が濃くなるほど殺菌力は高くなりますが、前述したように扱いに注意しなければ、ヤケドする危険性があるのです。
ちなみに、市販されているオキシフルなどの消毒液の過酸化水素の濃度は約3%。
飲料の缶などを消毒するために用いられる消毒液の中には、過酸化水素の濃度が50%以上のものもあります。
3.危険物としての過酸化水素
過酸化水素は、消防法によって危険物第6類に指定されています。
といっても、すべての過酸化水素水を使った製品が危険物に指定されているわけではありません。
濃度の高い水溶液などの一部です。
危険物第6類は「酸化性液体」といって、単独では燃焼しません。
しかし、分離したり可燃物と混ぜたりすると、酸素を放出して激しく燃えたり爆発したりします。
過酸化水素も酸素と水に分離するので、そこに可燃物を近づければ激しく爆発するでしょう。
さらに、高濃度の過酸化水素が蒸発すると目の痛みなどの健康被害が出ます。
そのため、重量数にして6%以上の過酸化水素水は、毒劇物に指定されているのです。
3-1.過酸化水素の保管方法や消火方法とは?
では、過酸化水素の保管方法や消火方法はどのようにすればよいのでしょうか?
この項で詳しくご紹介していきます。
ぜひ参考にしてくださいね。
3-2.過酸化水素の保管方法とは
過酸化水素は、直射日光をさけて冷暗所に保管します。
危険物は密閉容器に保管されるものが多いですが、過酸化水素は必ず通気孔をあけたものを使いましょう。
これは、過酸化水素がとても不安定な物質のためです。
過酸化水素が分解されると水と酸素になります。
酸素自体は人が吸いこんでも何も問題がありません。
しかし。密閉した容器の中で酸素が発生すると、酸素の逃げ場がなくなって容器が爆発する恐れがあるのです。
実際に、タンクローリーで過酸化水素を運搬中に分解が始まり、タンクローリーが爆発、横転する事故が発生したこともあります。
ですから、できれば運搬中も通気孔のある容器が望ましいでしょう。
また、別の物質を入れていた容器に過酸化水素を入れると、反応が始まる場合があります。
容器を再利用する場合は、必ずよく洗浄して使ってください。
3-3.過酸化水素の消火方法
過酸化水素は、水による冷却消火で大丈夫です。
しかし、前述したように過酸化水素は分解するとたくさんの酸素が発生します。
ですから、燃焼というより爆発することも珍しくありません。
そのため、過酸化水素に可燃性物質が近づいた場合は消化よりも非難を優先させましょう。
火事よりも爆発の方が犠牲者は出やすいのです。
また、過酸化水素が不安定にならないようにできるだけ低い濃度で保管しておく、という方法があります。
さらに、過酸化水素が保管してある場所の近くで火災が発生した場合は、必ず危険物取扱者の有資格者が消防へ通報しましょう。
その際、過酸化水素水があることを忘れずに伝えてください。
3-4.運搬の際の注意点
危険物第6類に分類される物質は、第1類以外の危険物と一緒に運ぶことはできません。
これを「混載禁止」といいます。
これは、一緒に運ぶと反応して爆発や火災の危険がある物質だからです。
しかし、過酸化水素は可燃性の物質であればどんなものでも火災や爆発が起こるかもしれません。
ですから、たとえ少量であってもできる限り可燃性の物質と運ばないように気をつけましょう。
4.おわりに
いかがでしたか?
今回は過酸化水素の性質や特徴についてご紹介しました。
過酸化水素は、学校で理科や化学の実験に使われる試薬でもあります。
ですから、あまり危険物と意識しない人が多いでしょう。
また、過酸化水素自体も濃度が薄ければ皮膚にヤケドをすることもありません。
さらに、それ自体が燃えたり爆発したりすることもないのです。
ですから、慣れた人ほど扱い方がおろそかになる可能性もあります。
しかし、ひとつ扱いを間違えれば、爆発の危険性がある物質です。
特に、濃度の高いものは酸素に引火して爆発するので扱いは十分に気をつけましょう。
酸素は目には見えませんし、無臭です。
かすかにオゾンの臭いがすることもありますが、ほとんど気づかないでしょう。
そのため、火を近づけたとたんに爆発、ということになるのです。
ですから、過酸化水素を扱い際は静電気なども要注意でしょう。
火花が飛べば爆発するのです。