アルミニウムにアルキル基が混ざっている物質を「有機アルミニウム化合物」と言います。
アルキルアルミニウムは危険物の1つです。
これから、アルキルアルミニウムの特徴や性質、用途、取り扱い方、注意点について説明します。
アルキルアルミニウムについて知りたい人、危険物取扱者資格取得のために勉強している人は、ぜひ参考にしてください。
- アルキルアルミニウムの特徴・性質・用途
- アルキルアルミニウムの取り扱い方
- アルキルアルミニウムの注意点
- まとめ
1.アルキルアルミニウムの特徴・性質・用途
私たちのまわりにはたくさんの危険物がひそんでいます。
危険物を安全に取り扱うためにも、特徴や性質、用途を把握しなければなりません。
そこで、危険物の1つであるアルキルアルミニウムの特徴・性質・用途について説明します。
1‐1.危険物の中でも非常に危険な物質群
アルキルアルミニウムは、第3類危険物の1つです。
第3類危険物は自然発火性物質および禁水性物質群になります。
消防法における危険物の中では、最も危険な物質として認識してください。
非常に危険なため、アルキルアルミニウムを移送する際は消防機関に指定の書面を送付しなければなりません。
消防機関の許可がなければ移送できないようになっています。
アルキルアルミニウムは化合物の総称ですが、細かい物質としてはさまざまな種類があるのです。
トリエチルアルミニウムやエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどがあります。
1‐2.アルキルアルミニウムの性質
無色の固体・液体をしているアルキルアルミニウムの性質について説明します。
アルキルアルミニウムは「自然発火性物質」、「禁水性物質」と2つの性質を持っているので要注意です。
空気中の酸素に触れると自然発火する恐れがあります。
そして、水に触れると爆発的に反応するでしょう。
反応によって可燃性のある強いガスが発生します。
さらに、アルキルアルミニウム自体も周囲に飛び散ってしまうのです。
また、ハロゲン化物と激しく反応して有毒ガスを生み出します。
消化方法にハロゲン消火剤はありますが、アルキルアルミニウムの場合は不適切です。基本的に、炭素数やハロゲン数が少ないほど危険性が高くなります。
炭素数が1~4の場合、自然発火の可能性が高いです。炭素数が5以上のものは点火しないと燃えません。
そして、6以上のものは空気中で酸化した結果、白煙がたちのぼるでしょう。
1‐3.アルキルアルミニウムの用途
アルキルアルミニウムは危険物でもありますが、重合媒体として優秀です。
よって、合成ゴムの製造にも使用しています。
私たちが日ごろから使用しているプラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレンだけでなく、コンピューターにも使用しているのです。
コンピューターではヒートシンクと呼ぶ放熱・吸熱効果のある部品に使用しています。アルキルアルミニウムの用途は幅広く、私たちが普段から使っているものにでも入っているのです。
触媒作用を高める高分子合成としては、とても重要な化合物群になるでしょう。
2.アルキルアルミニウムの取り扱い方
2‐1.水・空気との接触を避けて完全密封する
危険物の中でも非常に危険なアルキルアルミニウムは、取り扱いに十分気をつけなければなりません。
基本的な取り扱い方としては、水・空気との接触を避けることが1番です。
自然発火性・禁水性物質のアルキルアルミニウムは絶対に水・空気と触れてはいけません。
触れてしまうと発火して有毒ガスが発生してしまいます。
激しい反応を起こすのでたちまち大きな事故につながるでしょう。
事故を未然に防ぐためにも、専用の容器に完全密封してください。
少しでも隙間をつくってしまえば空気が入りこんでしまいます。
また、絶対に皮膚につけてはいけません。皮膚に触れてしまうとやけどをしてしまいます。
2‐2.窒素などの不活性ガスで満たす
アルキルアルミニウムを取り扱う際、完全密封と同時に大切なことがあります。
「窒素などの不活性ガスで満たすこと」です。
不活性ガスを満たすことで安心して保管できるでしょう。
不活性ガスで満ちている容器の中にアルキルアルミニウムをいれてください。
保管場所としては、火気のない高温ではない場所が最適です。
火気のある高温の場所では爆発・火災を起こす可能性が高いでしょう。
もし、容器が壊れた場合は中からアルキルアルミニウムがもれてしまいます。
破損を防ぐためにも安全弁や可溶栓をつけてください。
念には念を、しっかり管理を徹底して保管しなければなりません。
3.アルキルアルミニウムの注意点
3‐1.火災が起こったときの対処法
もし、アルキルアルミニウムで火災が起きたら、どう対処すればいいのでしょうか。
正しい保管をしているから知らなくていいわけではありません。
アルキルアルミニウムの取り扱いには正しい消火方法も把握してください。
アルキルアルミニウムはハロゲン化物や水、空気中の酸素と激しく反応します。
よって、一般的な消火方法の「水」を使用してはいけません。
「水」や「ハロゲン化物」の消火法ではなく、乾燥砂や粉末消火剤が最適です。
1度点火したら激しく燃えあがるので、消火までは時間がかかってしまうでしょう。
少しずつ火の強さを抑えながら全部消し終わるまで監視してください。
「ある程度消火すれば安心」と思いがちですが、いつ再び勢いが増すのかわかりません。
完全に消し終わるまで、燃焼し終わるまでが勝負です。間違った方法で消火しないよう気をつけてくださいね。
3‐2.発生する蒸気を吸いこまない
アルキルアルミニウムの燃焼によって発生する蒸気は非常に有毒です。
発生する蒸気を吸いこんでしまえば、肺や気管などの呼吸器に障害が起こります。
呼吸困難になって意識障害になる恐れもあるのです。
もし、蒸気が発生した場合は、口を押さえて吸いこまないようにし、すぐに換気をしてください。
また、炭素数が小さいほど反応は過激になりますが、危険性を抑制することもできます。
危険性の緩和方法は“ベンゼン”や“ヘキサン”などで希釈するのです。ベンゼン・ヘキサンはアルキルアルミニウムの危険性を緩和する効果を持っています。
200℃近くまで温めるとエチレンやエタン、アルミニウム、塩化水素ガスに分解するのもアルキルアルミニウムの特徴です。
ちなみに、ケトンと混ぜると縮合反応を起こします。物質との反応を知ることもアルキルアルミニウムを扱う大切な内容です。
4.まとめ
アルキルアルミニウムの特徴・性質・用途、取り扱い方、注意点について説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
アルキルアルミニウムは第3類危険物の1つです。危険物の中でも自然発火性・禁水性物質と言う特徴を持ち、危険度が高い物質になります。
1つ取り扱い方を間違えれば、たちまち火災・爆発が起こりケガをしてしまうでしょう。未然に事故を防ぐためにも、安全な方法で保管しなければなりません。
水や空気に触れない密封容器にいれて不活性ガスで満たすことが大切です。
もし、アルキルアルミニウムによって火災が発生したときは「乾燥砂」や「粉末消火剤」を使用して消火してください。水やハロゲン化物での消火では逆効果になります。安全に取り扱うためにも特徴・性質・注意点をきちんと把握しておきましょう。