「リチウム」は第3類危険物の1つです。
私たちのまわりにはさまざまな危険物があります。
危険物取扱者はありとあらゆる危険物の特徴を把握しておかなければなりません。
そこで、危険物の1つである「リチウム」の性質や危険性、絶縁油の取り扱い・保管方法について説明します。
リチウムの性質について知りたい、危険物取扱者資格取得のために勉強している人はぜひ参考にしてください。
- リチウムの性質
- リチウムの危険性
- 絶縁油の取り扱い・保管方法
- まとめ
1.リチウムの性質
安全に危険物を取り扱うには危険物の性質・特徴を把握しておかなければなりません。
アルカリ金属で第3類危険物に入っているリチウムの性質について詳しく説明します。
身近なところで使用している危険物なので注意してチェックしていきましょう。
1‐1.「禁水性」の特徴を持っているリチウム
リチウムは銀白色をしている固体の物質です。
比重はおよそ0.5と単体の中では非常に軽い性質を持っています。
基本的に第3類危険物は自然発火性と禁水性の両方を持っている物質です。
しかし、リチウムには自然発火性はありません。
「禁水性」という性質だけを持っているので注意してください。
「禁水性」とは、水と触れ合うと自然発火する性質のことです。
リチウムは水に反応して「水素」を生み出します。水素が燃えると酸素とまじわって爆発を起こすでしょう。
実際、リチウムから発生した水素で爆発した例も起きています。
また、水だけでなくハロゲンとも激しく反応するので要注意です。
リチウムが燃えたときは深赤色の炎を出します。
1‐2.固体金属の中で「比熱」が最も高い
比熱(比熱容量)は、物質1gの温度を1℃上昇するために必要な熱量を指しています。
リチウムは固体金属の中で最も高い比熱を持っているのです。
比熱が高い物質ほど温度差を生み出すために強大な熱量が必要になります。
よって、リチウムは温まりにくく冷めにくい物質と言えるでしょう。
逆に、比熱が低い物質は温まりやすく、冷めやすい性質を持っています。
高い比熱を持っていることから、伝熱用途として活用する機会が多いです。
冷却材などでもリチウムを利用しているものがありますよ。
また、リチウムの化学的性質は基本的にアルカリ土類金属に似ているでしょう。
1‐3.リチウムの主な用途とは
現在、リチウムは陶器・ガラスの添加剤、1次・2次電池、耐熱グリースとして使用しています。
全消費量のおよそ30%は陶器・ガラス関連の窯業系と言えるでしょう。
続いてリチウムイオン2次電磁が消費量を占めています。
また、携帯用電子機器・自動車用バッテリーとしての需要にも大活躍です。
危険物としてのリチウムは、第2次世界大戦において最初は航空機用の耐熱グリースとして使用していました。
しかし、水と触れ合うと水素を生み出す禁水性から水素爆弾製造に使うための需要が大きく増加したのです。
水素爆弾を生み出す素材としては必要不可欠なものでした。
冷戦終了後からはリチウムイオン2次電池用としての需要が増加しています。
以上のように、非常に危険な水素爆弾にも変化できる危険物です。取り扱いには十分な注意が必要でしょう。
2.リチウムの危険性
2‐1.リチウムによる火災は「水」と「ハロゲン」を使ってはいけない
リチウムの危険性がわかりやすいのは、独特の性質である「禁水性」です。
水に反応すると爆発する危険のある水素を生み出します。
禁水性であることを決して忘れてはいけません。
よって、リチウムによる火災が起きたとき絶対に「水」を使用した冷却消火はNGです。水を使えば逆に炎がひどくなってしまいます。
また、ハロゲン化物を利用した消火方法も絶対にしないでください。
ハロゲンも水と同じく、激しく反応します。そして、ハロゲン化リチウムを生み出すのです。
リチウムによって起こる火災は、乾燥砂などを利用した「窒息消火」が基本になるでしょう。
リチウムを扱う場所には必ず乾燥砂を保管しておかなければなりません。
2‐2.リチウムイオン電池やバッテリーに要注意
近年、リチウムイオン電池やリチウムバッテリーによる火災・爆発が起きています。
危険物であるリチウムへの危険性を心配しますが、リチウム自体が原因ではない可能性もあるのです。
確かに、自然発火性かつ禁水性の性質を持っている第3類危険物の1つになります。
けれども、リチウムが持っている性質は禁水性だけです。
リチウムが空気中でも発火するのは明らかなうそになります。空気中では自然発火しません。
なぜリチウムイオン電池やバッテリーが発火するのかと言うと、高いエネルギー状態になっているからです。
正直、原因は明確になっていませんが、高いクラスター状として含んでいるからなどという見解もあがっています。
リチウムイオン電池・バッテリーの取扱いには十分な注意が必要です。
3.絶縁油の取り扱い・保管方法
3‐1.絶縁油の取り扱い方
液状になっている絶縁体のことを「絶縁油」と言います。
ほとんどの電力機器における絶縁材料として活用しているのです。
絶縁油には6つの特性があります。
絶縁耐力が大きい、粘度・凝固点が低い、引火点が高い、機器を浸食しない、電気・化学的に安定していることです。
絶縁油が第3石油類に入っている場合“危険物”になります。
よって、取り扱い方には明確なルールが決まっているでしょう。
危険物の取り扱い方は基本的に、自治体の条例によって異なります。
指定数量以上の絶縁油を使用するのなら消防署へ必要な書類を提出しなければなりません。
規則をやぶると法律違反になるので注意してください。
電気機器に使用している場合、危険物取扱者を常駐する必要はありません。
しかし、電気主任技術者の管理が必要になります。
3‐2.絶縁油とリチウムの保管方法
絶縁油の保管方法は、定期的にする「絶縁油試験」が大切になります。
絶縁油の劣化具合を調査する方法では専門知識を持っている電気主任技術者がほとんど担当するでしょう。
試験によって出た数値を3年周期で記録していきます。
数値が悪いと再生・交換しなければなりません。
一方、リチウムは禁水性なので水分との接触をできるだけ避けましょう。
水分がまったくない場所で専用の容器に密封してください。
また、水分だけでなく火気・加熱のない場所での保管がおすすめです。
保管方法によっては大事故につながる恐れがあります。
現場で働いている従業員たちの安全を守るためにも、危険物取扱者が責任を持って保管しなければなりません。
正しい方法で保管するには、専門知識の習得が必要不可欠です。
4.まとめ
リチウムの性質や危険性、絶縁油の取り扱い方、保管方法について説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
第3類危険物の1つであるリチウムには自然発火性がありません。
しかし、水に触れると水素を生み出す「禁水性」という性質を持っています。
独特の性質である禁水性には十分に気をつけてください。
水と接触することで爆発を起こす危険性があります。
安全に保管するためにも火気・加熱・水分を避けて密封容器で保管しましょう。
また、ハロゲン化物にも激しく反応します。
危険物の消火方法に「ハロゲン化物」はありますが、リチウムの場合は逆効果です。水・ハロゲンを使わない乾燥剤を利用した「窒息消火」が最適な消火方法になります。いざというときのためにも消火方法をきちんと把握しておきましょう。