りんは、古くから私たちの身の回りで着火剤などに使われてきた物質です。
りんは元素ですが、同素体がいくつかあるため、黄りんや黒りんなどの種類があります。
そこで、今回は赤りんの性質や危険物としての取り扱い方をご紹介しましょう。
危険物にしていされているりんは、ほかに黄りんがあります。
このふたつの違いもご紹介しましょう。
危険物取扱者の資格を取得したいという方や職場で赤りんを取り扱っているという方は、ぜひこの記事を読んでみてください。
- 赤りんの性質や特徴とは?
- 黄りんとは何が違うの?
- 赤りんの取り扱い方と消火方法とは?
- ご家庭にある赤りんの保管方法と注意点
- おわりに
1.赤りんの性質や特徴とは?
前述したように、りんにはいくつかの同素体があります。
赤りんは、紫りんを主成分とする白りんとの混合体です。
白りんを日光に当てたり、密閉した容器で黄りんを250度に熱したりすると、赤りんになります。
赤りんは、危険物第2類に指定されていますが、りんの中では比較的安定した物質です。
ちなみに、危険物第2類とは「可燃性固体」が分類されています。
酸化されやすい還元物質が多いため、酸性のものと触れると粉じん爆発や自然発火を起こす恐れがあるものです。
ちなみに、同じりんでも黄りんは危険物第3類に分類されています。
複数の危険物取扱者乙種や甲種を受験する方は、混合しないように気をつけましょう。
赤りんは通常では赤褐色の粉末です。
発火点は260度と高いですが、粉じん爆発を起こす危険性があります。
ですから、取り扱う際は舞い散らないように気をつけましょう。
なお、燃焼すると有毒な「五酸化りん」が発生します。
さらに、赤りんは黄りんと混ぜ合わせると自然に発火する危険が出るのです。
通常ならば、赤りんと黄りんが混じり合うことはありません。
しかし、赤りんは黄りんを燃焼させて作ります。
ですから、不良品の赤りんには燃焼しきれなかった黄りんが混じっている恐れもあるのです。
さらに、赤りんは酸化剤を混ぜると、まさつ熱でも発火するようになります。
これを利用したのがマッチの頭です。
赤りんはこのほかにも、医薬品や農薬の原料としても使われています。
さらに、可燃性樹脂に少しだけ赤りんを混ぜると燃えにくくなるという性質があるのです。
ですから、危険物の中は珍しく難燃剤(なんねんざい)にも使用されています。
ガソりんや灯油と同じように私たちにとっては身近な危険物のひとつ、といえるでしょう。
2.黄りんとは何が違うの?
さて、赤りんの同素体に黄りんがあります。
同じりんですが、こちらは赤りんに比べるとかなり不安定な物質です。
黄りんは、空気中にそのまま放置しておけば白煙を生じて自然発火します。
つまり、そのまま保管しておくことはできません。
発火点も50度とかなり低いので、室温でも発火する危険がゼロではないのです。
さらに、発火すると五酸化二りんを生じさせます。
また、アルカリと接触するとりん化水素ガスを生じさせるのです。
これほど危険な物質ですが、その昔はマッチの頭などに使われていました。
現在では、黄りんを使ったマッチは製造が禁止されています。
黄りんは今、赤りんの原料として使われているものがほとんどです。
黄りんの保存法は、弱アルカリ性の水溶液につけて保存します。
しかし、アルカリ度が高いと有毒なりん化水素ガスが生じるでしょう。
また、皮膚に直接触れるとやけどをするため、取り扱いには厳重な注意が必要です。
このように、名前は似ていますが、黄りんと赤りんでは全く性質が違います。
ですから、性質の違いを忘れなければ、混合することはないでしょう。
3.赤りんの取り扱い方と消火方法とは?
この項では、赤りんの保存の仕方や消火方法をご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
3-1.赤りんの保管方法
赤りんは、火気に近づければあっという間に燃えます。
ですから引火点は「知見なし」と表示されているのです。
そのため、赤りんは密封した容器に入れて、火気厳禁で保管しましょう。
なお、密封した容器を勢いよく開けたときに、粉末が舞い散ると粉じん爆発が起きる可能性があります。
特に、冬場は静電気の火花でも爆発が生じることがあるのです。
ですから、容器の形状もふたを開けたときに飛び散らないようなデザインにしなければなりません。
また、絶対に黄りんと一緒に保管してはダメです。
黄りんと赤りんの両方を取り扱っている業者は、保管場所自体も遠くに離しましょう。
また、一緒に運搬することも不可能です。
たとえ短距離でも、赤りんと黄りんの容器を一緒に抱えて運ぶ、などということをしてはいけません。
3-2.赤りんの消火方法
赤りんは冷水による冷却消火を行います。
しかし、前述したように燃えている赤りんからは五酸化りんという有害物質が発生しているのです。
ですから、不用意に近づいてはいけません。
初期消火は無理だと判断したらすぐに119番通報をしましょう。
必ず危険物取扱者の資格保持者が行い、燃えているのが赤りんであることと、その量を伝えてください。
そうすれば消防も設備を整えて出動してくれます。
なお、風向きによっては従業員や近隣の方を避難させましょう。
4.ご家庭にある赤りんの保管方法と注意点
ご家庭にある赤りんといえば、マッチです。
現在は、使っているご家庭も少なくなりましたが、まだまだ現役という方もいるでしょう。
マッチは、まさつで火をつけます。
また、消したつもりが消えていないということもありますので、マッチの燃えカスは必ず火の気のない場所にまとめておいておいてください。間違ってもゴミ箱の中に直接ほうりこんだり、屋外へ捨てたりしてはいけません。
枯れ草にマッチを放り投げたことが原因で、山火事や野火などは発生することも珍しくないのです。
また、マッチが大量にあって処分に困っているという方もいます。
マッチはかつて、ポケットティッシュと同じようにノベルティの花形でした。
ですから、飲食店をやっていたという家には未使用のマッチが大量にあってもおかしくないのです。
多量のマッチは持ち運びできません。
公共交通機関への持ち込みもできないので注意しましょう。
捨てるときは水に一晩つけておき、頭がふやけたところで水を切ってそのまま燃えるゴミとして捨ててください。
そうすれば、あやまって発火することもないでしょう。
また、マッチはお寺や神社でろうそくやお線香をつけるときに需要があります。
寄付を受け付けてもらえるところがあるならば、引き取ってもらいましょう。
5.おわりに
いかがでしたか?今回は赤りんの性質や取り扱い方の周囲点をご紹介しました。
赤りんは、粉じん爆発さえ気をつければ、比較的危険物の中では扱いやすい物質です。
しかし、細かいので目や爪の間に挟まりやすいので、気をつけてください。
取り扱う際は手袋やゴーグルなどをした方がよいでしょう。
また、赤りんが各家庭にそのまま保管されている可能性は少ないですが、学校の実験施設などでは保管されている可能性があります。
実験に使う赤りんは少量ですが、それでも粉じん爆発が起こる可能性があるのです。
また、黄りんも一緒に取り扱っているというところは、絶対に混ぜ合わせたり混同しないように気をつけてください。
前述したように、万が一の災害に備えて保管場所も離しておくことが大切です。
黄りんに比べると取り扱いが簡単なように思えますが、けっして粗雑にあつかわないようにしましょう。